基本法の題名

前回、最近制定された法律の題名について感じるところがあったと記載したが、その法律は、平成25年12月に公布・施行された「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法」である。
この法律は議員提出によるものであるが、気になるのは、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する」という部分が散文的になっていながら、「国土強靭化基本法」の部分がそのようになっていない点である。
現時点で、法令データ提供システムにより「基本法」と入力して法令索引検索をすると、43の法律がヒットするが、この法律以外に散文的な表現をしたものは存在しない。しかし、成立はしていないが、第164回国会に提出された「食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案」、第156回国会に提出された「緊急事態への対処及びその未然の防止に関する基本法案」など、散文的な題名の基本法が提出されていたことからすると、それを徹底するなら「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土の強靭化に関する基本法」といった名称になるのであろう。
ところで、大森政輔『20世紀末期の霞ヶ関・永田町―法制の軌跡を巡って―』では、前回取り上げた記載に続けて、次のように記載している。

さらに、「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」は〔義務教育政治的中立確保臨時措置法〕で、また、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び完全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する法律」(54字)は〔アメリカ合衆国軍隊用地使用等特別措置法〕で充分ではないでしょうか。詳細は、本則第1条の目的ないし趣旨規定に盛り込まれます。

この法律は、提出された時の題名は、「防災・減災等に資する国土強靭化基本法」であった。単に「国土強靭化基本法」とした方がいいように思うのだが、「国土強靭化」=公共工事のバラマキといった批判を考慮して、防災とか減災という言葉を入れたのだろう。しかし、その次に「等」という文字がしっかり入っている。防災と減災だけが目的ではないのである。