免状の規定

消防法に基づく危険物取扱者免状については、次の同法第13条の2の規定において、免状の種類のみ法律で規定し、その免状を有することで行うことのできる事務等については、省令に委任している。

第13条の2 危険物取扱者免状の種類は、甲種危険物取扱者免状、乙種危険物取扱者免状及び丙種危険物取扱者免状とする。
2 危険物取扱者が取り扱うことができる危険物及び甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者*1がその取扱作業に関して立ち会うことができる危険物の種類は、前項に規定する危険物取扱者免状の種類に応じて総務省令で定める。
3 危険物取扱者免状は、危険物取扱者試験に合格した者に対し、都道府県知事が交付する。
4〜7 (略)

危険物取扱者免状は、甲種、乙種、丙種の順に高度であることは予想できるのであるが、どのような事務をどのような免状で行うのが適当か判断した上でその種類を決めているのであろうから、免状の種類だけを法律で定めるのは論理的とは言えない。取り扱う事務を省令等に委任するのであれば、免状の種類も委任するのが論理的と思われるが、不思議とそのような立法例はない。
さらに、消防法第13条第1項の規定による危険物保安監督者は、同項の規定により甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者のうちから定めることとしているため、同法第13条の2第2項の取り扱うことができる事務を省令に委任するという考え方も一貫していない。
他の法律でも上記の消防法のような規定例もあるのであるが、適切なのは、次の「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」に基づく放射線取扱者主任者免状の規定であろう。

放射線取扱主任者
第34条 許可届出使用者、届出販売業者、届出賃貸業者及び許可廃棄業者は、放射線障害の防止について監督を行わせるため、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める者のうちから、放射線取扱主任者を選任しなければならない。この場合において、放射性同位元素又は放射線発生装置を診療のために用いるときは医師又は歯科医師を、放射性同位元素又は放射線発生装置を医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律昭和35年法律第145号)第2条に規定する医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の製造所において使用をするときは薬剤師を、それぞれ放射線取扱主任者として選任することができる。
(1) 特定許可使用者、密封されていない放射性同位元素の使用をする許可使用者又は許可廃棄業者 次条第一項の第一種放射線取扱主任者免状(次号及び第三号において「第一種放射線取扱主任者免状」という。)を有する者
(2) 前号に規定する許可使用者以外の許可使用者 第一種放射線取扱主任者免状又は次条第一項の第二種放射線取扱主任者免状(次号において「第二種放射線取扱主任者免状」という。)を有する者
(3) 届出使用者、届出販売業者又は届出賃貸業者 第一種放射線取扱主任者免状、第二種放射線取扱主任者免状又は次条第一項の第三種放射線取扱主任者免状を有する者
2 (略)
放射線取扱主任者免状)
第35条 放射線取扱主任者免状は、第一種放射線取扱主任者免状、第二種放射線取扱主任者免状及び第三種放射線取扱主任者免状とする。
2 第一種放射線取扱主任者免状は、原子力規制委員会又は原子力規制委員会の登録を受けた者(以下「登録試験機関」という。)の行う第一種放射線取扱主任者試験に合格し、かつ、原子力規制委員会又は原子力規制委員会の登録を受けた者(以下「登録資格講習機関」という。)の行う第一種放射線取扱主任者講習を修了した者に対し、原子力規制委員会が交付する。
3 第二種放射線取扱主任者免状は、原子力規制委員会又は登録試験機関の行う第二種放射線取扱主任者試験に合格し、かつ、原子力規制委員会又は登録資格講習機関の行う第二種放射線取扱主任者講習を修了した者に対し、原子力規制委員会が交付する。
4 第三種放射線取扱主任者免状は、原子力規制委員会又は登録資格講習機関の行う第三種放射線取扱主任者講習を修了した者に対し、原子力規制委員会が交付する。
5・6 (略)
7 第一種放射線取扱主任者試験及び第二種放射線取扱主任者試験(以下「試験」と総称する。)は、放射性同位元素又は放射線発生装置の取扱いに必要な専門的知識及び能力を有するかどうかを判定することを目的とし、別表第1の上欄に掲げる試験の種類に応じ同表の下欄に掲げる課目について行う。
8 第一種放射線取扱主任者講習、第二種放射線取扱主任者講習及び第三種放射線取扱主任者講習(以下「資格講習」と総称する。)は、別表第二の上欄に掲げる資格講習の種類に応じ同表の下欄に掲げる課目について行う。
9 (略)
(別表第1及び別表第2 略)

放射線取扱者主任者免状は、その種類に応じ行うことができることが第34条で規定されており、さらに、その免状を得るための試験等の内容についても法律で明記されている。
このような書き方が本来あるべき姿のように感じる。

*1:甲種危険物取扱者は甲種危険物取扱者免状の交付を受けている者、乙種危険物取扱者は乙種危険物取扱者免状の交付を受けている者である(消防法第13条第1項)。