「改正規定」の一部を特定する「うち」

2016年7月8日付け記事「『同改正規定』はどこまで同じなのか」に対し、半鐘さんから次のような意見をいただきました。

……「うち」を使う対象は、複数の規定の群れ、なのではないかと思っています。
「等改正」や「整備法」では、一の条≒改正法ですので、大体の場合、改正規定が複数あります。改正規定が一つの場合でも、改正の柱書があるので、規定は複数です。
そうした仮説からすると、実例の「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律の一部改正」における「第6章の次に6章を加える改正規定」は、複数の規定から成るので、「うち」を使うところと言えますが、検討例の「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正」における「次のように加える改正規定」は、一応、一つの改正規定なので、「うち」を使わないところなのではないかと思います。そのため、かっこ書で分けることによったのではないか、と思うわけです。

私が上記記事で記載した結論は、単純に半鐘さんが追記されているように、「中」と「うち」の関係を、「及び・並びに」あるいは「又は・若しくは」の関係と同じように考えてのものです。私は、一部改正で用いられているやり方については、それがルールだと割り切って考えることが多く、そこで用いられている文言の意味もあまり深く考えないのですが、「うち」という語句の意味を考えた場合、気持ち悪さを指摘されるとおっしゃるとおりだと言わざるを得ません。
厳密に考えると、「……改正規定のうちA中」とした場合、「A」は改正規定でなければいけないわけで、その意味では、平成18年法律第66号も平成26年法律第28号の代替案も改正規定でないことは同様だと思います。また、「A」の部分が「規定」でもいいと考えるのであれば、平成26年法律第28号の代替案も、表の項を一規定と考えることも可能だと思います。
私は、たとえ1つの改正規定であっても、複数のそれが組み合わされたものと考えることもできるように思います。つまり、平成26年法律第28号も表に複数の項を加える改正であるため、例えば1項から成るある条に2項を加える場合、改正規定は1つの「第○条に次の2項を加える」というものであるが、分解すると第2項を加える改正規定と第3項を加える改正規定が組み合わさったものと考えることができると思いますので、表の項の場合も同様に考えてよいように思います。
あとは、平成26年法律第28号、あるいは平成18年法律第66号の立案に当たり、どれだけ精緻に検討されたかということになりますが、改正規定の引用は、案外ラフなところがありますので、所詮その程度のことなのかもしれませんが。