区域外にある者に対する条例の罰則適用の可否
都議会 条例改正案が成立 自画撮り画像子供に要求で罰金
東京都議会定例会で15日、18歳未満の子供に自分の画像の送信を要求する行為に罰金を科す「都青少年健全育成条例改正案」が、全会一致で可決され成立した。脅されたり、だまされたりした子供が、自分の裸などを写した「自画撮り」画像をメールで送信した後、インターネット上に公開されるなどの被害を防ぐ目的。施行は来年2月1日で、「自画撮り」の要求に罰則規定を盛り込む条例の施行は全国初となる。
改正条例では、18歳未満の子供に対し威迫や、金銭の支払いを約束したり、同性になりすましてだましたりするなど不当な方法で、児童ポルノなどの自画撮り画像を要求した場合、30万円以下の罰金を科す。
児童買春・児童ポルノ禁止法では、18歳未満のわいせつな画像などの製造や提供は禁止されているが、提供の要求については規定がなく未然防止の観点では法的な限界があった。
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毎日新聞 2017年12月15日配信
自画撮り画像を要求した者に対して罰則を科すこととするのであれば、当然、当該自治体の区域外にいる者も念頭に置く必要があり、実は私はそうした者に罰則を科せるか疑問を持っていた。
都では、パブコメに対する回答によると判例等を踏まえ可能であると判断したとのことである。都が参考にした判例かどうか分からないが、小早川光郎ほか『論点体系判例行政法1』(P92)には、自治体の区域外から区域内に向けて電話をかけた行為につき、当該自治体の条例の適用を認めた判例として、高松高裁昭和61年12月2日判決が挙げられている。事案は、被告人が数回にわたり徳島県所在の自宅から香川県にあるA方に電話をして、同人の妻のBに対し「あんたが好きです。会ってほしい」などと反復して申し向け、Bに著しく不安又は迷惑を覚えさせるようなことをしたというものであり、これに香川県の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」の適用があるかどうか問題となった事案である。原審は、その適用を否定して被告人を無罪としたのに対し、同高裁判決では次のように述べて原判決を破棄している。
条例は当該地方公共団体の区域内の行為に適用されるのが原則であるものの、本件のように当該地方公共団体の区域外から区域内に向けて内容が犯罪となる電話をかける行為に及んだ場合には、電話をかけた場所のみならず、電話を受けた場所である結果発生地も犯罪地と認められるのであり、このように犯罪の結果発生地が香川県にあるとされる以上、行為者は直接的かつ現実的に香川県に関わりを持つたものというべく、香川県民及び滞在者と同様に本件条例が適応されるものと解すべきである。
この判決に対する解説として、「判例タイムスNO.631」(P245)は、「属地主義のもとにおいては、当該地域において犯罪構成事実の一部が生じた場合でも刑罰法規の適用があると解されている(ポケット註釈刑法50頁等)。したがって、本判決の結論は正当であり、またそれは前述した本条例の目的にも合致すると考えられる」としている。
この考え方、つまり犯罪構成事実の一部は当該自治体の区域で生じる必要があるとすると、上記判例の事案は電話だから犯罪地の判断が容易だと思うが、携帯電話とかスマートフォンの場合に、自画撮り画像を要求された者が当該自治体の区域内にいたかどうか、さらにどの時点でいればよいのかといったことが問題になるような気がするのだがどうだろうか。