改正議員定数・選挙区条例の施行日等

例規の施行日について、特定の事実の発生にかからせる場合がある。そして、その例として「次の総選挙から施行する」という例が挙げられることがあり(田島信威「最新法令の読解法(4訂版)」(P303)参照)、自治体の条例では、まだそうした事例が散見される。
しかし、内閣法制局関係者が執筆した書籍に上記の例を記載したものは見当たらず、むしろ、林修三「法令作成の常識」(P190)は、この例は選挙法の場合に限って用いられる慣用例であり、普通は「この法律は、公布の日から施行する」などとして、別項で「この法律は、次の総選挙から適用する」というように書かれるとしている。
そうしたこともあってか、公職選挙法については、昭和61年法律第67号を最後にこうした施行期日とされておらず*1、現在は、施行日とは別に適用関係を定める規定を置いて処理しているのが一般的である。
ところで、議員の定数と選挙区は、国会議員については公職選挙法で定められており、自治体の議員については「○○議会議員の定数及び選挙区に関する条例」というような題名の一の条例で定められているのが通常だと思われる。
そして、国会議員の定数の改正をする場合の改正法律の附則は、衆議院議員の定数を減少した平成12年法律第1号の附則は次の例1のとおりであり、参議院議員の定数を減少した平成12年法律第118号の附則は次の例2のとおりである。

<例1>
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(適用区分)
2 この法律による改正後の公職選挙法の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後初めてその期日を公示される衆議院議員の総選挙から適用し、施行日の前日までにその期日を公示された衆議院議員の総選挙及び施行日以後初めてその期日を公示される衆議院議員の総選挙の期日の公示の日の前日までにその期日を告示される衆議院議員の選挙については、なお従前の例による。
<例2>
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から、施行する。
(適用区分等)
第2条 この法律による改正後の公職選挙法(以下「新法」という。)の規定(新法第4条第2項及び別表第3の規定を除く。)及びこの法律による改正後の国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律(昭和25年法律第179号)の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後初めてその期日を公示される参議院議員通常選挙から適用し、当該選挙の公示の日の前日までにその期日を告示される参議院議員の選挙については、なお従前の例による。
2 新法第4条第2項及び別表第3の規定は、施行日以後その期日を公示される参議院議員通常選挙並びにこれに係る再選挙及び補欠選挙について適用し、施行日の前日までにその期日を公示された参議院議員通常選挙並びにこれに係る再選挙及び補欠選挙については、なお従前の例による。
3 この法律の施行前にした行為及び第1項の規定によりなお従前の例により行われる選挙に係るこの法律の施行後にした行為については、なおこの法律による改正前の公職選挙法第16章の規定の例による。
参議院議員の定数に関する特例)
第3条 参議院議員の定数は、新法第4条第2項の規定にかかわらず、平成13年7月22日又は平成13年に行われる通常選挙の期日の前日のいずれか遅い日までの間は、252人とし、当該遅い日の翌日から平成16年7月25日までの間は、247人とする。
  (以下略)

議員の定数を減少させる改正を行う場合、厳密には、任期満了までは従前どおりの定数としておかないとおかしいように思うが、そうした配慮はしていない*2。平成12年法律第118号の附則第3条は、そうした配慮をしているように見えるが、この規定は、参議院議員が半数改選であるためだろう。そうすると、自治体においては、例1を参考にすればよいことになり、次のようにすればよいことになる*3

(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(適用区分)
2 この条例による改正後の○○条例の規定は、この条例の施行の日(以下「施行日」という。)以後初めてその期日を告示される○○議員の一般選挙から適用し、施行日の前日までにその期日を告示された○○議員の一般選挙については、なお従前の例による。

*1:昭和61年法律第67号の附則第1項は、「この法律は、公布の日から起算して30日に当たる日以後初めて公示される総選挙から施行する。」という規定である。

*2:議員の定数は公職選挙法で規定されているので、それはあくまでも選挙で選ぶ議員の定数なのだと考えれば、そうした配慮は必要ないことにはなると思われる。

*3:一般選挙以外の補欠選挙等は、考慮しないこととする。