条例の施行期日を定める規則の施行期日を定めることは必要か

条例の委任に基づき、当該条例の施行期日を定める規則において当該規則そのものの施行期日を定める必要があるかどうかについて問題とされることがある。これは、規則に施行期日を置かないと、公布の日から起算して10日を経過した日から施行されることになる旨の規定が地方自治法にあるため、疑義が生じているものである。
この点について、石毛正純『自治立法実務のための法制執務詳解(4訂版)』(P215〜)では、「条例の施行期日を定める規則については、政令の場合と同様、わざわざ附則に施行期日に関する規定を置くまでもなく、当該規則は公布の日から施行されると解される」としている。これについては、特に異論はない。
ただ、実際には、自治体によっては、条例の施行期日を定める規則に附則を付している例もある。この点について前掲書は、各自治体の従前からの取扱いを変える必要はなく、立法方法として附則を付けるべきではないというところまで意味するものではないとしているが、これについては、多少異論がある。
この問題が、条例の施行期日を定める規則に限った問題であればいいのだが、それに限った問題とは言えないと思うからである。
例えば、ある条例において、次のような施行期日に関する規定を置いた場合を考えてみる。

この条例は、平成○年○月○日から施行する。ただし、第○条の規定は、公布の日から施行する。

施行期日に関する規定にも施行期日を定めることが想定されるのであれば、上記の施行期日に関する規定は、本文に規定する期日から施行されることになってしまう。そうすると、本文に規定する期日とただし書に規定する期日を入れ替えて本文に規定する期日を「公布の日」とするか、「第○条」を「第○条及びこの項」とでもしなければいけなくなるが、合理的とは思えない。
また、次のような規定を置いた場合を考えてみる。

この条例中第○条の規定は平成○年○月○日から、第○条の規定は平成○年○月○日から施行する。

この例でも、どちらかの施行期日が公布の日から起算して10日以前の日となっていれば、上記の施行期日に関する規定の施行期日を定める必要も出てくることになるが、これも合理的ではないであろう。
以上のことからすると、そもそも施行期日に関する規定については、施行ということを想定しておらず、したがって、条例の施行期日を定める規則の施行期日を定める必要はなく、また定めるべきではないものと考えるべきではないだろうか。
ちなみに、法律に施行期日に関する規定を置かないと、公布の日から起算して20日を経過した日から施行される旨の規定が法例にある(法の適用に関する通則法にも同様の規定がある)ので、上記の条例の施行期日の例のような問題は、法律の場合にもあることになる。この点、法律では、施行期日に関する規定の施行期日は置かないものとして、徹底しているようであり、例えば、法施行法で、第1条に法の施行期日の規定を置いた場合、当該法施行法の施行期日の規定は次のようにしている。

この法律(第1条を除く。)は、平成○年○月○日から施行する。

もちろん、地方自治法第16条第3項があることによって解釈上の疑義が生じることは事実なので(したがって、この問題が、施行期日を定める規則に限った問題であれば、当該規則にも附則を付した方がいいとも思うのだが)、立法論としては、この規定によって施行期日が定まるケースはないのではないかと思われるので、削除すべきではないだろうか。