「とともに」という用語について

私は、例規審査の業務を始めた頃は、基本条例の審査が嫌いであった。
基本条例の目的規定とか基本理念を定める規定とかは、往々にして原課の思い入れが強く、とかく冗長になりがちであったが、もともと国語がそれほど得意ではなかった私は、なかなかきれいにすることができないでいた。
例えば、基本条例の目的規定としてよくあるのは、目的達成の手段→直接的な目的→高次の目的としている例であるが、次の住生活基本法の目的規定も同様である。

この法律は、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策について、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体並びに住宅関連事業者の責務を明らかにするとともに、基本理念の実現を図るための基本的施策、住生活基本計画その他の基本となる事項を定めることにより、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上と社会福祉の増進を図るとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

手段の部分は、パターン化しているので、前例踏襲すればいいのだが、難儀なのは、目的を書いている部分である。
目的も、「直接的な目的」が1つ、「高次の目的」が1つ、計2つということであればいいのだが、原課の案には、4つも5つも出てくることがある。
どれでもいいから2つだけにしてくれというわけにもいかず、そうはいっても削るものは削り、いくつか残ったものを「直接的な目的」と「高次の目的」に振り分けた上で、ではそれをどう並べるか。「及び」「並びに」を使って並べてもいいのだが、読みにくくなること必死である。
そんなとき、上記の例のように「〜とともに、〜」と書いている例を見て、この用語を使うようになってから、結構読みやすい文章になることが多かったように思う。
おかげで、この用語を使うようになってから、私は、基本条例に対するアレルギーがなくなったような気がする。ただ、こうした都合のいい言葉を見つけると、やたらそれを使いたがる面があったことも否定できず、それはそれで反省しないといけないけれど。