用語

「及び」と「又は」(その2)

次の規定は、「社会福祉法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令(平成28年政令第185号)」第1条の規定により追加された社会福祉法施行令第13条の2の規定である。 (特別の利益を与えてはならない社会福祉法人…

共有物の持分を有する者は所有者なのか

地方税法に次の規定がある。 (震災等により滅失等した家屋に代わる家屋等に対する都市計画税の減額)第702条の4の2 市町村は、震災、風水害、火災その他の災害(以下この条において「震災等」という。)により滅失し、又は損壊した家屋の所有者(当該家屋…

「又は」「若しくは」

「又は」と「若しくは」の使い方については、あえて説明する必要はないと思うが、実際に使用する場合には、どちらを使うべきか悩むときもあり、法律・政令のレベルでも誤っている例もまれに存するところである。 次の規定は、「所得税法施行令の一部を改正す…

「協働」

元我孫子市長で中央学院大学の福嶋浩彦教授は、『時の法令NO.2019』(P41)において、一般に「協働」という言葉で語られている連携であっても、責任や権限の持ち方は全く違うものがあるとして、次のように記載している。 「協働」という言葉は、もう使わなくて…

号で項目を列記する柱書にあえて「及び」を用いている例

次の規定は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成27年政令第1号)」第2条の規定により追加された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行令…

年齢における「以下」

「以下」と「未満」の説明の際に年齢を用いていることが多いと思うが、例えば18歳以下という場合、18歳に達してから1月を経過した人は、これに含まれるだろうか。 通常、このような人の年齢は、あくまでも「18歳」であって、「18歳1月」とは言わない。「年…

「同法」とできないだろうか

会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第91号)(水産業協同組合法の一部改正に伴う経過措置)第80条 この法律の施行の際現に前条の規定による改正前の水産業協同組合法(以下この項において「旧水協法」という…

「以上」「以下」を用いる場合に留意すべきこと

次の規定は、「内水面漁業の振興に関する法律」第27条の規定である。 (休業の届出)第27条 指定養殖業の許可を受けた者(以下「許可養殖業者」という。)が農林水産省令で定める期間以上にわたって休業しようとするときは、休業期間を定め、あらかじめ農林…

「及び」と「又は」

「及び」と「又は」の使い分けは、理屈上は明確であるが、実際には迷う場合も多い。本来であれば「及び」を使うべきところ、「又は」にしていたり、その逆のケースも多い。 では、私自身どのように考えて使い分けをしていたか、次の下水道法施行令の規定を取…

「みだりに」

以前(2010年3月12日付け記事「検察協議」)、検察協議において「みだりに」という用語について適切でないとの指摘を受けたことがあると記載したことがある。 「みだりに」とは、社会通念上正当な理由があると認められない場合をいうものとされている(吉国…

続・外来語の使用

以前(2007年9月22日付け記事「外来語の使用」)、例規文における外来語の使用について取り上げたことがあったが、前回取り上げた、井上ひさし『日本語教室』に外来語の使用について考える上で参考となる記載があったので、それを取り上げることにする。 上…

「権利」

以前(2013年10月5日付け記事「子どもの権利擁護のための条例」)、「Rights」の訳語を「権利」とするのは正しくないといった趣旨のことを記載したことがある。 この「権利」という言葉について、井上ひさし『日本語教室』*1(P100〜)に次のように記載されて…

「等」と「など」

法令における「等」と「など」の使い方については、従来は全て「等」を用いていたが、最近は「など」を用いる例も見られるようになっている*1。 しかし、実際には「等」と「など」の使い分けは、難しい。廣瀬菊雄『公用文 用字用語の要点』(P266)は、次のよ…

「当該」と「その」

法令用語としてよく取り上げられるものに「当該」がある。この「当該」は、古風な漢語調の用語であり、「その」と意味がほとんど変わらないため、「当該」ではなく「その」を使うようにしたらよいとの意見もある(田島信威『法令用語ハンドブック(三訂版)…

年齢の表記

以前、kei-zuさんが、年齢は「年齢のとなえ方に関する法律」により満年齢で表記することとされているため、法令においては「満○歳」とは表記しないということを記載されていた。 私はあまり意識したことがなかったのだが、見てみると確かに「満○歳」とはして…

一の法令内で異なる語句について同一の略称を用いる例

略称を用いる場合、それを特定の用語だけに限定することがあることからすると(法制執務研究会『ワークブック法制執務』)、一の法令内で異なる語句について同一の略称を用いることもありということになろう。 例えば、内閣府設置法では次のように、経済財政…

包括条項の表現

一般的にはバスケットクローズと言われる包括条項の表現として、「その他……」と規定する場合と「前各号に掲げる(定める)もののほか……」と規定する場合がある。 法令の規定例を見ると、厳密な使い分けはされていないようである。例えば、次の金融商品取引法…

準用と適用

「準用」と「適用」を説明するときには、両者を対比して行われることが多い。例えば、法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P718)には、次のように記載されている。 「適用」ということが、その規定の本来の目的とする対象に対して規定を当てはめるこ…

「の規定に基づく」と「の規定による」(下)

ある規定で書かれている用語を他の規定で引用する場合の表現である「の規定による」について、法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P705〜)は、単に「当該……規定を根拠としてされる「……」であることを示す場合の用語例である」としている。 しかし…

「の規定に基づく」と「の規定による」(中)

前回(2011年7月15日付け記事「『の規定に基づく』と『の規定による』(上)」)引用した記事では、「の規定に基づく」と「の規定による」には意味の違いはなく、その規定を根拠とするという意味合いを強調するときに「の規定に基づく」を使用すると記載さ…

「の規定に基づく」と「の規定による」(上)

ある規定で書かれている用語を他の規定で引用する場合の表現として、「の規定による」と「に規定する」の使い分けについて触れたことがある(2006年10月8日付け記事「『第○条の規定による××』とするか『第○条に規定する××』とするか」)。これは初期の頃の…

「設置する」と「置く」(下)

吉国一郎ほか『法令用語辞典(第9次改訂版)』(P473)における「設置」という用語の記載で、次のようなものがある*1。 ある施設又は制度を法律上の存在として設ける行為をいう。……この意味の「設置」と同じ意味で、単に「設ける」又は「置く」という表現が用…

「設置する」と「置く」(上)

少し前になりますが、kei-zuさん(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20100821)が「設置する」と「置く」について取り上げておられましたが、私も特に組織に関してこれらの用語が用いられている例を取り上げてみることにします。 法令用語研究会『法律用語辞典…

「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(下)

今回は、「○○」が法令以外の場合の規定例や同一の法令でも書きぶりに整合が取れていない規定例を取り上げる。1 法令以外の法形式等に委任する場合 予算などの法令以外の法形式等に委任する場合の書き方としては、下位の例規に委任する場合と同様、次のよう…

「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(中)

前回(「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(上))、同位の例規の規定事項を引用するような場合には、「○○に定める……」とするのが原則ということになると記載した。 しかし、例えば法律が法律を引用する場合であっても、次のような例は、法律という…

「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(上)

下位の例規に委任する場合や同位の例規の規定事項を引用するような場合に「○○×定める……」と書くとき、この「×」の部分を「で」とするのか「に」とするのか迷ったことがあった。 しかし、次にような例と比較して考えることで、自分の中では一定の整理をしてい…

「○○に相当する金額」

金額を表示する際に、次のように「○○に相当する金額」という用語をよく見かける。 平成21年法律第28号による改正前の道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和33年法律第34号)(道路整備費の財源) 第3条 政府は、平成20年度以降10箇年間…

「努めなければならない」と「しなければならない」

洋々亭さんのサイトで、「努めなければならない」と「しなければならない」という用語について議論されていましたが、私が例規審査をしていたときに、これらの用語の使い方について感じていたことを記してみます。 一般的に、「努めなければならない」という…

「順位」

「順位」の意義について、法令用語研究会『法律用語辞典』では「法律的効力の優劣又は法律上の地位の順序」とされている。したがって、順位を記載する場合、次のように「○○の順位は、△△の順序とする」とされる。 石綿による健康被害の救済に関する法律(特別…

「経過する日」と「経過した日」

「経過する日」と「経過した日」の違いは、ある程度法制執務をやった人にとっては当たり前のことなのかもしれない。しかし、私は、当初は漫然と使っていて、その違いをあまり意識していなかったということもあるので、ここに書き記しておきたい。 違いは、用…