目的等規定(趣旨等規定)

nationfreeさん(http://d.hatena.ne.jp/nationfree/20061123)が触れているのを拝見したので、取り上げてみます。
持ち込まれた条例案の原案が全体で5条程度だったのだが、その第2条が定義規定にされていたものがあった。
定義している語句は1つだけだったが、各号で列記する必要があったので、とても括弧を用いて定義することができない、だからといって、この程度の条例に定義規定を置くのもどうかと思い、第1条にその語句を用いる必要もあったので、第1条の第2項で定義規定を書いた例がないものかと思って検索したところ、次のような例があった。

   2005年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法
 (目的等)
第1条 この法律は、平成17年に開催される2005年日本国際博覧会に関し、国際博覧会条約第12条の規定
 に基づく政府代表の設置及びその任務、給与等について定めることを目的とする。
2 この法律において「国際博覧会条約」とは、1988年5月31日に総会において採択された1928年11月
 22日の国際博覧会に関する条約(1948年5月10日、1966年11月16日及び1972年11月30日の議定書並びに
 1982年6月24日の改正によって改正され及び補足されたもの)の改正による改正前の1928年11月22日に
 パリで署名され、1948年5月10日、1966年11月16日及び1972年11月30日の議定書並びに1982年6月24日
 の改正によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約をいう。

そして、第1条で各号列記している例として、次のようなものがあった。

   平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国
   際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決
   議等に基づく人道的措置に関する特別措置法
 (目的)
第1条 この法律は、平成13年9月11日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃(以下
 「テロ攻撃」という。)が国際連合安全保障理事会決議第1368号において国際の平和及び安全に対する脅
 威と認められたことを踏まえ、あわせて、同理事会決議第1267号、第1269号、第1333号その他の同理事会
 決議が、国際的なテロリズムの行為を非難し、国際連合のすべての加盟国に対しその防止等のために適切
 な措置をとることを求めていることにかんがみ、我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国
 際社会の取組に積極的かつ主体的に寄与するため、次に掲げる事項を定め、もって我が国を含む国際社会
 の平和及び安全の確保に資することを目的とする。
 (1) テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与
  するアメリカ合衆国その他の外国の軍隊その他これに類する組織(以下「諸外国の軍隊等」という。)
  の活動に対して我が国が実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項
 (2) 国際連合の総会、安全保障理事会若しくは経済社会理事会が行う決議又は国際連合国際連合の総会
  によって設立された機関若しくは国際連合の専門機関若しくは国際移住機関(以下「国際連合等」とい
  う。)が行う要請に基づき、我が国が人道的精神に基づいて実施する措置、その実施の手続その他の必
  要な事項

よって、第1条第2項に定義規定を置き、しかも同項で各号を用いた案にして、議会に提案した。
結果的には、この規定自体には特に異論もなく成立したのだが、例規審査を経験した者の中には、いかがなものかというような意見を言う人もいた。
私自身は、全体のバランスの方が気になるので、このような書き方にあまり違和感はないのだが、もしかしたら美的感覚に問題があるのかもしれない。
なお、他に第1条に2項を付している例として、次のようなものがある。

   独立行政法人通則法
 (目的等)
第1条 この法律は、独立行政法人の運営の基本その他の制度の基本となる共通の事項を定め、各独立行政
 法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定める法律(以下「個別法」という。)と相まって、独
 立行政法人制度の確立並びに独立行政法人が公共上の見地から行う事務及び事業の確実な実施を図り、
 もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする。
2 各独立行政法人の組織、運営及び管理については、個別法に定めるもののほか、この法律の定めるとこ
 ろによる。   

   ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
 (目的等)
第1条 この法律は、ポリ塩化ビフェニルが難分解性の性状を有し、かつ、人の健康及び生活環境に係る被
 害を生ずるおそれがある物質であること並びに我が国においてポリ塩化ビフェニル廃棄物が長期にわたり
 処分されていない状況にあることにかんがみ、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管、処分等について必要な
 規制等を行うとともに、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理のための必要な体制を速やかに整備することに
 より、その確実かつ適正な処理を推進し、もって国民の健康の保護及び生活環境の保全を図ることを目的
 とする。
2 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理については、この法律に定めるもののほか、廃棄物の処理及び清掃に
 関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)の定めるところによる。

これらの規定の第2項は、他の法令との関係を明らかにする規定であるが、趣旨規定として第1条に規定されることもあるので(大島稔彦『法令起案マニュアル』P192参照)、定義規定の場合よりは違和感はないのではないだろうか。