届出制とその規制手法について(その1)

数年間例規審査をやったなかで、新規の条例で、届出制のものには何度かお目にかかったのだが、許可制のものにはお目にかかることはなかった。
最近は、行為規制をする場合に行為者に住民と協議させる規定を設けることもあり、制度設計をする上で、結構特徴的な規定ともいえると思うが、その場合は、許可制よりも届出制の方が仕組みを作りやすいということはあるような感じがする。
また、風営法において、風俗関連営業を許可制ではなく届出制にしたのは、実態把握のほかに公的機関が認めた業種とされたくないためであるとされており*1、届出制にはこのような使い方もあるのだなあと思ったものだが、田村泰俊『最新・ハイブリッド行政法』(P241〜)では、これらを政策法務的な観点から見た届出制の意味であるとしている。
ただ、許可制を採るか届出制を採るかは、一般的には、次のように強い規制をするべきか、弱い規制で足りるのかといった判断に基づいているのだと言えるであろう。

ある種の行為又は事業に対する規制として、許可制にすべきか届出制にすべきかについては、その取締対象の社会的条件等から判断して公益上やむを得ない場合には一般的に禁止した上で特定の場合にのみ解除するという許可制をとり、比較的軽微な規制をもって足りると判断される場合には、届出制を採用することとなる(上田章・笠井真一『条例規則の読み方・つくり方』(P104))。

しかし、届出制に行政処分・罰則をリンクさせると、効果としては許可制とあまり変わらないようなものになってくる。例えば、公害法の多くに届出制が採用されていることについて、大塚直『環境法(第2版)』(P264〜)には、次のように記載されている。

規制の態様として、許可制の方が厳しいと一般的には考えられるが、届出制といっても、届け出さえすれば直ちに行為を適法にすることができるわけではないことにも注意する必要がある。例えば、大防法では、届け出られたばい煙発生施設が排出基準に適合しないと都道府県知事が認めるときは、その計画の変更や廃止を命じうることになっている(9条)。このような事後変更命令付きの届出制は、他の環境法にもみられるが、この種の届出制と許可制とは、届出後一定期間内に命令がなされない限り、申請者が基準を超える行為を適法になしうる点のみが異なるにすぎないわけである。

では、許可制を採る場合と届出制を採る場合のメルクマールはどこに見出すべきであろうか。この辺りについては、次回に記すこととしたい。

*1:阿部泰隆『行政の法システム(上)(新版)』(P81)参照。なお、平成18年6月8日に公布された探偵業の業務の適正化に関する法律における探偵業の届出も同様(栗原理恵『ジュリスト(No.1322)』(P65)参照)。