届出制とその規制手法について(その2)

許可制と届出制との違いを考えるに当たって、届出制に行政処分・罰則をリンクさせている例である景観法を取り上げてみたい。この景観法の仕組みに関しては、衆議院国土交通委員会において、竹歳国土交通省都市・地域整備局長の次のような答弁がある。

このさまざまな新しい仕組みというものは、建築物の建築等の行為自体をとめるものではございませんで、デザインとか色彩について、地域住民の意見を反映させながら策定される地域ごとのルールに適合させていこう、こういうものであるわけでございます。(第159回国会衆議院国土交通委員会(平成16年5月11日))

こういったものをみると、許可制と届出制とは、規制の対象とする行為等に対する考え方に本質的な違いがあるのだということができるのではないだろうかと思う。つまり、その行為等それ自体がそもそも適当でないと考える場合は、その行為等を一般的に禁止し、許可制を採るということになる。それに対し、その行為等それ自体は、特に悪いものでも何でもなく、適当でないということはないのだが、そのままにしておくと不都合な面が出てくる場合もあると考える場合には、届出制を採った上で、その不都合な部分にのみ規制をかけていくということになるのであろう。
したがって、自治体における行為等に対する規制は、他の自治体でその行為等が規制されていないのであれば、その行為等それ自体を適当でないものとして許可制を採ることは難しいであろうから、前回記載したように、自治体において行為等に対する規制を考える場合は、届出制が多くなるのも当然なのかもしれない。そして、上田章・笠井真一『条例規則の読み方・つくり方』(P119)には「届出に一定の法律効果を付与して実質的に許可制に近い制度を設けたり、更には届出の受理の拒否というような行政庁の裁量の余地のあるような規定を設けることとなる場合には、その法律上の必要性があると判断される限り、むしろはじめから堂々と許可制を採るべきである」と記載されているが、その必要性があるかどうかの判断として、規制する行為それ自体が適当なものかどうかということを考えなければいけないということになるのではないだろうか。
このように考えると、許可制にするか届出制にするかは、規制対象とする行為等それ自体に違いがあるからであり、規制が必要な部分それ自体を取り上げて比較した場合には、届出制だから許可制より規制の程度を緩くすべきということにはならないと一応は言えるのではないかと思う。
ただ、許可制の対象となる行為等と届出制の対象となる行為等の性格の違いから、規制内容についても一線を画さなければならない部分があると思う。その辺りについては、次回に譲ることとしたい。