第1項を追加する改め文

例えば2項からなる条に第1項として項を追加する場合には、次の2通りの改め文がある(前田正道『ワークブック法制執務(全訂)』(P400〜)参照)*1

<例1> 
第○条第2項を同条第3項とし、同条第1項を同条第2項とし、同項の前に次の1項を加える*2
<例2>
第○条第2項を同条第3項とし、同条第1項を同条第2項とし、同条に第1項として次の1項を加える。

項を追加する場合には、通常「第○条第×項の次に次の△項を加える」とすることを考えると、私は例1の方がしっくりとくるのだが、例2の方がいい場合もある。3つ程、例を挙げてみる。
1例目は、項番号がない例規の場合である。項番号がない例規で項を追加する場合には項の繰り下げをする必要がないから、例1に準じるとすると「第○条第1項の前に次の1項を加える。」とするのであろう。これでも理屈として間違いないだろうが、これで旧第1項が第2項になるというのが何となくしっくりこない感じがする。この場合には、単純に「第○条に第1項として次の1項を加える。」の方がいい感じがする。
2例目は、2項からなる条の旧第1項を第2項とし、旧第2項を第4項とし、第1項と第3項としてそれぞれ項を加える改正の場合である。この場合の第3項として1項を加える改正の方法としては、次の2通りがある。

<例3>
 第○条第2項を同条第4項とし、同項の前に次の1項を加える。
3 (略)
<例4>
 第○条第2項を同条第4項とし、同条第1項を同条第2項とし、同項の次に次の1項を加える
3 (略)

例3であれば、引き続いて「第○条第1項を同条第2項とし、同項の前に次の1項を加える。」とすれば良い。しかし、例4は、新第2項の前に1項を加える方式にしようとすると、溶け込みは同時に行われるという原則からすれば「第○条第1項の前に次の1項を加える。」とせざるを得ないが、その前に第1項を第2項にする改め文がある以上よくない感じがする。したがって、例4によるのであれば「第○条に第1項として次の1項を加える。」とせざるを得ないと思う。
3例目は、5項からなる条の第1項として1項を加える場合である。この場合も、「第○条第5項を同条第6項とし、同条第1項から第4項までを1項ずつ繰り下げ、」とすると、2つ目と同じ理由で、「同条に第1項として次の1項を加える。」とせざるを得ないだろう。新第2項の前に1項を加える方式にするには、「第○条第5項を同条第6項とし、同条第2項から第4項までを1項ずつ繰り下げ、同条第1項を同条第2項とし、同項の前に次の1項を加える。」としなければいけなくなるが、これだとちょっと迂遠な感じがする。
ある事項についてどのような改め方をするかは、他の事項についてどのような改め方をするかということに関係してくる場合もあると思うが、これもその一例だと思う。

*1:法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P452〜)も同様

*2:「第○条中第2項を第3項とし、第1項を第2項とし、同項の前に次の1項を加える。」という方法もある。例2も同じ。