一部改正の例規を改正する例規の立案(1)

以前、洋々亭さんのサイト(http://www.hi-ho.ne.jp/tomita/yybbs/)で一部改正の例規を更に改正する例規の立案について取り上げられていたが、これは、解説している文献はあまりないため、とまどう面もあるのかと思う。
もちろん、法令でも実例はあるのだが、国会における修正案の作成も基本的には同じ考え方で行っているかと思うので、参考になると思う*1。そして、修正案について解説している文献については、以前kei-zuさんが取り上げているが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060312)、ここでは、河野久『立法技術入門講座3法令の改め方』を参考にする。
技術的な内容に入る前に、どのような場合に一部改正の例規の一部を改正する例規を立案することになるかについて触れておく。「A条例の一部を改正する条例」について、「A条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例」を立案するのではなく、「A条例の一部を改正する条例」が施行されることを前提として、さらに「A条例の一部を改正する条例」を立案することも考えられるからである。
次のように、他条例の条項を引用する規定を加える条例案が既に公布されていることを想定する。

   A条例の一部を改正する条例
 A条例の一部を次のように改正する。
第2条に次の1項を加える。
2 ‥‥B条例第3条第2項‥‥
   附 則
 この条例は、平成19年4月1日から施行する。

この条例の公布後、施行前に、B条例の一部を改正する条例によりB条例第3条第2項が同条第3項に項ずれしたとする。この場合、A条例の一部を改正する条例により追加されたA条例第2条第2項の改正が必要になるが、通常はB条例の一部を改正する条例の附則で手当てすることになろう。そして、同条例の施行日が平成19年4月1日以降であれば、当然A条例の一部改正として同条例の第2条第2項を改めれば足りる。
これに対し、B条例の一部を改正する条例の施行日が同日前であるときは、A条例の一部を改正する条例が施行されるときに既にB条例第3条第2項は同条第3項になっているわけだから、理屈上はA条例の一部を改正する条例を一部改正することになるであろう。だが、B条例の一部を改正する条例においてA条例第2条第2項の手当てをする規定の施行日を同日にすることができれば、A条例の一部改正として同条例の第2条第2項を改める方法でもまあ許されるのではないかと思う。
このA条例の一部を改正する条例(以下「C条例」という。)を一部改正しなければいけない場合としては、C条例の施行日前に、さらにA条例第2条に1項の追加をする改正を行う必要が生じて、A条例の一部を改正する条例(以下「D条例」という。)を立案するような場合である。この場合には、D条例で第2条に追加する項は、第2項にするにしろ、第3項にするにしろ、C条例の施行前にD条例は溶け込んでいるわけだから、C条例の改め文を改正する必要が出てくる。
つまり、一部改正の例規の一部改正を行う必要があるのは、条、項等を追加した改正の施行前に当該例規を改正する必要が生じ、その結果、その追加した条、項等を移動しなけれなならなくなった場合が典型的な例として挙げることができ、それ以外の場合では、一部改正の例規の一部改正という方法に飛びつかなくても対応できる場合というのは結構あるのではないかと思う。
次に、具体的にどのように立案していくかである。上記の例でいくと、D条例の施行を前提とした場合にC条例で行いたい改正をするには、どのような改め文になるかを考えることから始まるであろう(必要に応じ、その改め文を作成するための新旧対照表も作成することになる。)。具体的には、第2条の改正規定は、次のようになる。

<C条例で追加している第2項を、D条例施行後も第2項とする場合>
第2条第2項を同条第3項とし、同条に次の1項を加える。
2 (略)
<C条例で追加している第2項を、D条例施行後は第3項とする場合>
第2条に次の1項を加える。
3 (略)

したがって、C条例がこのような条例の形になるように改正してやればいいわけである。
では、そのための改め文がどのようになるかであるが、これは次回以降に記載することにする。

*1:ただし、修正案の場合は、「」を含めて引用する場合には、その外を『』でくくることにしているが、一部改正例規の一部改正については、すべて「」を用いることなど多少異なる点はある。