一部改正の例規を改正する例規の立案(2)

通常の一部改正の例規については、条、項、号などを捉えて改め文を作成していくが、一部改正の例規を改正する例規については、改正規定を捉えて改め文を作成していくことになる。
一部改正の例規を改正する例規の立案のポイントは、この改正規定の捉え方ではないかと思う。改正規定の捉え方については、通常の一部改正の例規でも施行日の書き分けをする場合にも行う必要があるので、やり方はこれと同じである。しかし、改正規定の捉え方についてもあまり解説した文献がないし、あまり統一されてもいないような感じがする。そこで、河野久『立法技術入門講座3法令の改め方』の分類を参考にしつつ、以下記してみる。
1 字句を改める改正規定
前掲書では、条項中の字句を改める箇所が1つの場合には、「第○条中……」「第○条第3項第1号中……」というような形式になっているので、そのまま「第○条の改正規定」「第○条第3項第1号の改正規定」というように表現すればよいとし、後者については、他に同条の改正規定がない場合には、「第○条の改正規定」と簡略化しても不都合はないわけだが、修正箇所の特定がひとつだけであれば、通常は、簡略化しないのが例であるとしている。
では、次の例のように改正箇所の特定が複数になる場合はどうか。

<例1>
第○条第2項第3号中「……」を「……」に改め、同条第3項中「……」を「……」に改める。
<例2>
第○条第1項第1号中「……」を削り、同条第4項第1号中「……」の下に「……」を加え、同項第2号中「……」を「……」に改める。

この場合について、前掲書は次のように記載している。

最も規定に忠実に表現しようとすると、前者は「第○条第2項第3号及び第3項の改正規定」となり、後者は「第○条第1項第1号並びに第4項第1号及び第2号の改正規定」という表現になる。この場合、いずれも「第○条の改正規定」と簡略化できないわけではない。ただ、改正の要素が「字句の改正」だけであるような場合には、それほど簡略化の必要性が認められないために、「第○条の改正規定」とする例はあまり多くない。むしろ、このようなケースでは、号以下の単位で細かくとらえることを避け、項以上の単位(つまり、条と項)でまとめ、「第○条第2項及び第3項の改正規定」「第○条第1項及び第4項の改正規定」と表現することが多い。このように項以上の単位でまとめることについては、号以下が足切られることで非常に整序された表現になることのほかに、理論的な合理性もあると考えられる。それは、法律の規定として完結した意味を持ち得る最小の単位が項であるという点である。号以下は、それだけでは独立して意味を持つ規定ではない。このことから、改正規定を特定する表現として項及び条を単位とすることは、かなりの合理性を有することであるといえよう。

ここでは、法律の規定として完結した意味を持ち得る最小の単位が項であることをもって、改正規定を特定する場合にも項を単位とすることは合理的であるとしている。しかし、項を単位としているのは条文を書く場合の話であり、改正の場合に項を単位としているわけではないので、何となく後付けの理由のように感じる。改正は条を単位に行うこととされていることからすると、条を単位とする方が合理的ではないだろうか。
むしろ、字句を改める箇所が1つの場合には規定に忠実に簡略化しないのであるから、改正箇所の特定が複数の場合も原則としては規定に忠実に簡略化しないこととして、合理性の観点から必要に応じ適宜簡略化してもよいということにしておけばいいのではないだろうか。例えば、例1で、第○条第2項第3号の改正箇所のみ特定する必要があれば、「第○条第2項第3号の改正規定」とすればいいし、同条第3項の改正箇所も併せて特定するのであれば、「第○条第2項第3号及び第3項の改正規定」するのが原則だが、合理性の観点から「第○条の改正規定」と簡略化してもいいと考えればいいように思う(「第○条第2項及び第3項の改正規定」としてもあまり合理的とは思えない)。
なお、前掲書では、連続して3以上の条、項又は号について同一の内容の改正を行う場合には、「第○条から第○条までの規定中」というように指示することになっているので、「第○条から第○条までの改正規定」と表現すればよい(「第○条から第○条までの規定の改正規定」というように表現する必要はない)としている。
2 全文を改める改正規定
前掲書によると、条・項・号・本文・ただし書・各号列記以外の部分・前段・後段等を全文一括して改める場合には、「○○○を次のように改める」という形式になり、それを特定する表現は、1と同様に「第○条の改正規定」というように「……の改正規定」と表現することになるとしている。
(以下、次回へ)