一部改正の例規を改正する例規の立案(3)

3 条・項等を追加する改正規定
河野久『立法技術入門講座3法令の改め方』によると、条を追加する改正規定については、「第○条の次に○条を加える改正規定」というように表現し、条より小さい単位である項・号等を追加する改正規定については、「第○条第○項の次に1項を加える改正規定」「第○条に1項を加える改正規定」というように表現してもよいが、原則に戻って「第○条の改正規定」と表現することも可能であるとしている。
しかし、実際には、「第○条の改正規定」というように簡略化しない例が多いように感じる。項等の追加は、1つの条の改正規定であっても、その途中で改行する必要があり、段落ごとに改正規定があるということもできるからではないだろうか。事実、前掲書には、次のように記載している箇所もある。

同一条の改正でありながら複数の段落の改正規定に分かれる場合があるが、その場合、それを一括して「第○条の改正規定」と特定できないわけではない。ただ、誤解を招かないように、段落ごとに「第○条第1項の改正規定及び同条第3項の改正規定」というように表現することも多い。

4 条・項等を削除する改正規定
前掲書によると、条・項・号等を削除する改正規定は、「○○を削る改正規定」という表現で特定するものとし、項以下の単位を削る改正規定については、その上位の単位でまとめて「第○条の改正規定」と表現することもあり得るが、他と複合することなく単に削るだけの規定であれば「第○条第○項第○号を削る改正規定」というように表現するのが普通であるとしている。
5 条・項等を移動させる改正規定
前掲書によると、条を移動させる改正規定は、その規定の表現をそのまま使って特定することになるので、「第3条を第4条とする改正規定」「第5条を第6条とし、第4条を第5条とする改正規定」「第8条を第9条とし、第7条を第8条とし、第6条を第7条とする改正規定」「第10条を第12条とし、第7条から第9条までを2条ずつ繰り下げる改正規定」というように表現すればよいが、後二者については、3条以上の移動であるので「第6条から第8条までを1条ずつ繰り下げる改正規定」「第7条から第10条までを2条ずつ繰り下げる改正規定」というように、表現を簡略化する例も多いとしている。
合理性を考えるとこのように簡略化するということになるであろうが、私は、改正規定がまず1条だけ移動するというルールでやっている以上、簡略化しないほうがいいのではないかと感じている。
また、項・号等を移動させる改正規定については、前掲書は、条の移動の場合と同様に考えればよいが、条より小さい単位の項・号等の移動は、それだけで改正規定のセンテンスを構成せず、項・号等の追加や削除を伴ったものとなる場合が多いため、まとめて「第○条の改正規定」と簡略化されることもあり得るとしている。ただし、項等の追加がある場合については、3と同様に考えるべきではないだろうか。
(以下次回へ)