例規の形式(1)〜はじめに

2007年9月9日付けの記事で告知らしきことをしたのだが、これから14回程かけて例規の形式について記載することにする。
例規の形式について私が一番関心があった事項は、例規の形式ごとにどのような事項を規定すべきかということであった。これは、よく分からなかった事項と言い換えてもいいのだが、同様な人も結構いるようで、事実「これって、要綱でいいの、それとも規則か何かにしなければいけないの」という質問をよく受けた。ただ、一般の意識としては、規則にすると首長の決裁が必要だけれど、要綱だと課長かせいぜい部長の決裁で済むから、できれば要綱にしたいといったくらいのもののようであるけれど。
そして、この要綱の存在が例規というものを分かりにくくしているのであろう。要綱については、これを例規の形式として認めるのか、告示等をするべきなのかといったことが主に問題になってくると思われる。しかし、これらも例規の形式ごとにどのような事項を規定すべきかということがある程度明確になれば、解決する面もあるように思う。
ところで、例規の形式ごとにどのような事項を規定すべきかということについては、条例については地方自治法第14条第2項に規定があるが、長の規則や行政委員会の規則その他の規程については、地方自治法第15条第1項及び第138条の4第2項においてその権限に属する事務に関し定めることができるとするだけで、具体的な定めはない*1。さらに、それ以外の執行機関が定める例規については、根拠規定すらない(国における国家行政組織法第14条参照)。
これらのことからすると、法令のレベルでは、自治体における例規については、条例以外についてはほとんど関心がないということができるであろう。以前、「規則の活用〜文書管理に関する規程を規則にすることについて」で触れたように、現在の条例と規則の関係は整理し切れていないとされているが(小早川光郎・小幡純子『あたらしい地方自治地方分権』(P44)参照)、規則についてこの程度であれば、他の例規に関しては言わずもがなである。したがって、出石稔「自治立法としての規則、要綱等」鈴木庸夫『自治体法務改革の理論』(P76)に記載されているように「現段階では、条例、規則、要綱の境界線は一概にはいえないし、はっきり線引きできるものでもないだろう。自治体現場においていずれの規範を選択するかは『立法政策』の範疇である」ということになるのであろう。
だから、これから記載することは、あくまでも私の個人的な見解であって、いろいろと考え方はあり得るということを断っておきたい。
記載する項目は、おおむね次のようなものを予定している。

  1. 規則の内容
  2. 要綱
    1. 要綱を例規の一形式と考えるべきか
    2. 要綱の内容と公表
    3. 要綱の審査
  3. その他
    1. 行政委員会の規程の発令形式
    2. 例規の題名と発令形式
    3. 訓令の公表
    4. 告示と公告

今回の記事を記載するに当たって、特に次の文献を参考にした(末尾の括弧内は、記事で用いる略称)。他にも当然参照すべき文献はあるのだが、何分絶版書籍は閲覧しずらい地域にいる関係上、今回は参照していないので、場合によっては後日追記することとしたい。
(参考文献)
出石稔「自治立法としての規則、要綱等」鈴木庸夫『自治体法務改革の理論』(出石・理論)
兼子仁『自治行政法入門』(P77〜88)(兼子・入門)
木佐茂男編『自治立法の理論と手法』(P302〜341)(木佐・理論)
長谷川彰一「地方公共団体の規則及び委員会規則その他の規程」松永邦男ほか『自治立法』(長谷川・立法)
平岡久「地方公共団体の長の規則に関する若干の考察」『行政法解釈の諸問題』(平岡・解釈)
藤島光雄「要綱行政の現状と課題」『マッセOSAKA 研究起要第7号』(藤島・要綱)
山本武『地方公務員のための法制執務の知識(全訂版)』(P279〜281)(山本・知識)
松本英昭『新版逐条地方自治法(第4次改訂版)』(P203〜211)(松本・逐条)

*1:地方自治法第15条第1項は「普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる」とし、同法第138条の4第2項は「普通地方公共団体の委員会は、法律の定めるところにより、法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる」としている。