例規の形式(3)〜規則の内容(その2)

今回から具体的にはどのような事項が規則で定めるべき事項と考えられるか記載していくことにしたい。便宜上、長の事務に関する事項と各執行機関に共通する事項という形で大きく括った上で*1、項目を列挙していきたい。
ところで、前回(「例規の形式(2)〜規則の内容(その1)」、規則で定めるべき事項は、一般的には住民に関係する事項のうち、住民を拘束するもの又は住民に権利性を認めるもの(以下単に「住民に関係する事項」といったように省略して用いる場合がある)とするのがいいのではないかと記載した。しかし、なかには純粋に自治体内部の事項と考えざるを得ないような事項もあるように思われるので、その辺りはできるだけ意識して記載していくようにしたい。
なお、行政委員会の規則その他の規程については、ここでは敢えて取り上げることをしないが、長の規則と同様に考えることができる部分が多分にあるものと思われる。
1 長の事務に関する事項
(1) 組織
組織に関する規程は行政規則であるとされることもあるが、組織に関する事項が法律事項とされていることから考えて(「自治体の組織(1)〜はじめに」参照)、住民の生活に関係する組織の単位については法規で定めたほうがいいと考えることができると思う。
以下具体的に項目を掲げる。
 ・ 長の内部組織における課
長の内部組織については、地方自治法第158条第1項で直近下位のそれについては条例で規定する必要があるが、それ以外の内部組織については、松本・逐条(P503)では「長の定める規則等で定めることが可能である」とされており、規則で何を定めなければいけないということは記載されていない。
しかし、地方自治法第171条第5項は「普通地方公共団体の長は、会計管理者の権限に属する事務を処理させるため、規則で、必要な組織を設けることができる」とされていることからすると、法令においても自治体の組織のうち一定のものは規則で定めることが適当であると考えていることになる。
この点については、以前「自治体の組織(6)〜各執行機関(特に長)の組織・2内部組織」で触れたとおり、課については規則で定めるべきであると考えている。
 ・ 職
職の設置については、都道府県は原則として規則で定めることとされているため(地方自治法施行規程第5条)、法令において規則規定事項とされていることになる。
市町村の場合は同様の規定はないが、地方公営企業法第15条第1項*2のように職については規則で定めることを前提としているものと考えられる規定もあることから、職の設置は規則で定めるのが適当ということになろう。
しかし、職について規則で定める理由は、住民に関する事項という観点からは説明しにくく、よく分からない。
 ・ その他
その他の事項として、事務の委任、専決等の事務処理に関する規程を規則で定めることも考えられる。これについては、「自治体の組織(7)〜委任と専決」を参照
事務の委任については、地方自治法第171条第4項は「普通地方公共団体の長は、会計管理者をしてその事務の一部を出納員に委任させ、又は当該出納員をしてさらに当該委任を受けた事務の一部を出納員以外の会計職員に委任させることができる。この場合においては、普通地方公共団体の長は、直ちに、その旨を告示しなければならない」とされていることからすると、長の事務をその補助機関等に委任する場合も、告示することはともかくとして、規則で定めることまでは予定していないと言うことができ、ましてや専決についても同様であろう。しかし、事務の委任は、誰が行政処分等の行為を行うことができるかということと関わるので、住民にとっても重大な関心事ということができるので、規則の方が適当のような感じがする*3

*1:「長の事務に関する事項」という表現が必ずしも適当とは思えないが、全執行機関に共通する事項という視点を取り入れたいので、それに対する事項として便宜的に定めたものである。本音としては、全執行機関に共通する事項とそれ以外の事項という意味合いである。

*2:地方公営企業法第15条第1項は「管理者の権限に属する事務の執行を補助する職員(以下「企業職員」という。)は、管理者が任免する。但し、当該地方公共団体の規則で定める主要な職員を任免する場合においては、あらかじめ、当該地方公共団体の長の同意を得なければならない」としており、その規則においては職を引用して規定することが通常であろう。

*3:ただ、平成16年法律第84号による行政事件訴訟法の改正により、行政訴訟の被告とすべき者が行政庁からその所属する団体になっているので、従来より規則で定める必要性は少なくなっているとはいえそうである。