例規の形式(4)〜規則の内容(その3)

(「1 長の事務に関する事項」の続き)
(2) 庁舎管理
 規則で規定する事項の代表例として庁舎管理が挙げられることがあるが、次のとおり条例で定めるべきという見解もある。

○ 庁舎管理規則……で関係者の人権制限的定めをしていることを、行政内部関係に入る際の合意に基づくところと解してきたのは、政策法務的に再検討されるべきであろう(兼子・入門(P81))
○ 庁舎のうち公共用物的性格をもつ部分は実質的に地方自治法にいう「公の施設」に近いともいえるのであり、少なくとも住民等の利用を制限する等の「外部」的効力を生じさせることを意図する部分については、必要的条例事項であると考えることもできるであろう(平岡・解釈(P69〜))。

しかし、地方分権推進委員会による「法令において地方公共団体の条例、規則等へ委任する場合の基本的考え方」という意見(H12.8.8)の中で、「公物管理権等の物的支配権に基づく規制については、公共用物と公用物とを区別し、公共用物に係る権利義務規制については、原則として条例によるべき必要があるが、公用物については侵害留保原則の対象外として、改正地方自治法第14条第2項の射程外である」とされており、この考え方でいいと思う。
では、庁舎管理に関する事項は、規則ではなく、要綱等で定めてはいけないのだろうか。例えば、庁舎管理に関する規程は行政規則なのであると考えると、法規である規則で必ず定めなければいけないということにはならないであろう。
沿革的にも、戦前の市町村規則及び府県規則は、昭和18年までは、それぞれ市町村又は府県の営造物に関してのみ定めることができるとされ、昭和18年の改正で営造物に関すること及び一般的な事務に関して定めることができることとされたのであるが(長谷川・立法(P246〜)参照)、原龍之介『公物営造物法(新版)』(P109)では、その「公物管理規則は公物の管理権に基づいて、その公物の管理について定める行政規則的性質を有するもの」であるとしている。庁舎管理に関する事項が条例事項でない理由として長の庁舎管理権限を根拠にするものがあるが*1、こうした考え方は、庁舎管理に関する規程を行政規則と考えるのであろう。
しかし、私は、長の庁舎管理権限に基づき定める規則が行政規則となるという理屈がよく分からない。やはり、住民に対する利用関係という視点から考えるべきであると思う。そうすると、庁舎の公用性というものをどのように考えるかという政策的な問題なのではないかという感じがする。つまり、庁舎の住民の利用をあくまでも例外的なものと考えるのであれば要綱でもいいということになろうが、現在の庁舎の利用等を考慮すると、規則で定めた方が適当な事項なのではないだろうか。

*1:例えば、平岡・解釈(P69)には、「(1)地方自治法14条2項はいわゆる『侵害留保原則』を採用したものであり、庁舎の管理はこの原則が想定している範囲外の事項である、(2)長は庁舎管理権限を有しており、庁舎管理規則はこの権限にもとづいている、という理由づけが考えられる」という記述がある。