施行日までに公布されなかった例規の施行日はどうなるか

今回もちょっと脱線して、washitaさん(http://d.hatena.ne.jp/washita/20071015)やtihoujitiさん(http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20071015)が取り上げていた省令を取り上げてみます。
問題の省令は、次のとおり10月15日付けで公布されているのに施行日が10月1日となっている。

厚生労働省令第126号
 障害者自立支援法(平成17年法律第123号)第29条第9項、第32条第7項及び第34条第3項の規定に基づき、介護給付費等の請求に関する省令の一部を改正する省令を次のように定める。
  平成19年10月15日
 厚生労働大臣 舛添 要一
 介護給付費等の請求に関する省令の一部を改正する省令
 介護給付費等の請求に関する省令(平成18年厚生労働省令第170号)の一部を次のように改正する。
 附則第2条に次の1項を加える。
7 平成19年9月分の介護給付費等の請求に関する第5条の規定の適用については、同条第1項中「10日」とあるのは、「12日」とする。
   附 則
 この省令は、平成19年10月1日から施行する。

厚生労働省例規は、いかがなものかと思ってしまうものが結構あるように感じる。どこかで名前を書いたような気もするけれど、その人の言葉を借りて言うと「厚生労働省例規は信用ならない」ということである。
規定した施行日までに公布されなかった例規の施行日をどのように考えるかということについては、次のように考えられている。

○ 法令により施行日が確定的に定められている場合に、その施行日までに公布されなかったときとか、あるいは、法令の規定中に一定の日までに施行されることが予定される内容のものがあった場合に、その本来施行されるべき日までに公布されなかったときなどには、その法令の効力はどのように考えればよいでしょうか。この場合、もちろん、罰則などのように遡及適用できないものもありますが、場合によっては、公布が法令の内容を変えるものではないという性格から、公布により施行され、本来の施行日又は施行されるべき日に遡って遡及適用されると考えた方がよいものもあり得るでしょう(長谷川彰一『法令解釈の基礎』(P75))。
○ 施行期日を確定日とした法律案や条例案が提出されてきたときに、その日までに成立しなければ施行期日を修正しなければならない。このような施行期日の修正が行われるケースはよくみられるが、もし原案のままで成立してしまったときにはどう解釈すべきであるかということが問題になったことがある。
その例として引用されるのは、国税通則法(昭和37年法律第66号)である。この法律はその附則の第1条本文において、「この法律は、昭和37年4月1日から施行する」と定めているが、公布されたのは4月2日であった。前述のごとく公布していない以上施行されないから施行日を4月1日というわけにはいかない。この場合には、公布のあったのが4月2日だから4月2日から施行され、4月1日から適用されると解するのが法文の趣旨を勘案した解釈といえよう。ただし、国税通則法は手続的な法律で、格別このように解釈しても、国民の不利益になるということも考えられないから、4月1日に遡って適用になると解釈したが、これが国民の権利を害したり、義務を課する内容の法令や刑罰法規を内容とする法令であるとしたら、それを過去に遡って適用になると解釈することはできないから、このような場合には公布の日から施行し、かつ、公布の日から適用されるものと解釈しなければならないものであろう(田島信威『最新法令の読解法(改訂版)』(P301〜))。

自治体の場合は、条例の議決は、すべての条例についてあらかじめ予定されている日に一括して行うことが通常だろうから、このようなことはまず起こらないだろうが、施行日を確定日とした条例案が継続審査になり、後の議会で施行日を修正することなく議決してしまったような場合には起こりうることも考えられる。
ところで、上記の省令は、幸いなことに意図したとおりの解釈をしてもらえそうである。だが、10月1日に施行するという意図があったとすれば、少なくとも決裁は同日までに得ていなければ筋が通らないであろう。決裁を得てから官報登載までにどれくらい時間がかかるものなのだろうか。