例規の形式(6)〜規則の内容(その5)

(「1 長の事務に関する事項」の続き)
(4) 手続的事項
  ・ 様式、添付書類等
地方分権推進委員会による「法令において地方公共団体の条例、規則等へ委任する場合の基本的考え方」という意見において、「法令に規定されている権利義務規制に関する様式、添付書類、受付窓口等の手続的事項」は、地方自治法第14条第2項の射程外とされている。これらの事項は、法又は条例の施行規則において定めることが多い。
添付書類とか受付窓口などは、必ず従ってもらいたい事項であろうから規則で定めるべきであろう。これに対し、様式の場合は、その様式に必ずしたがってもらいたい場合と特にこだわらないが申請者等の便宜のために定める場合とが考えられ、前者は規則で定める必要があるが、後者はあえて規則という形式で定める必要はないであろう。
  ・ 不服の申出等に関する事項
住民が不服の申出等を行う手続の代表的なものとしては、行政不服審査法に基づく不服申立ての手続がある。同法に基づく不服申立てではないが、職員に関する手続として人事委員会又は公平委員会が行う勤務条件に関する措置の要求や不利益処分に関する不服申立ての審査の手続は、次のとおり人事委員会規則又は公平委員会規則で定めることとされており、不服申立ての手続に関する事項は、規則で定めることとすることが考えられる。

地方公務員法
(人事委員会又は公平委員会の権限)
第8条 人事委員会は、次に掲げる事務を処理する。
(1)〜(8)  (略)
(9) 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し、判定し、及び必要な措置を執ること。
(10)職員に対する不利益な処分についての不服申立てに対する裁決又は決定をすること。
(11)・(12)  (略)
2 公平委員会は、次に掲げる事務を処理する。
(1) 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し、判定し、及び必要な措置を執ること。
(2) 職員に対する不利益な処分についての不服申立てに対する裁決又は決定をすること。
(3)・(4)  (略)
3〜7  (略)
8 第1項第9号及び第10号又は第2項第1号及び第2号の規定により人事委員会又は公平委員会に属せしめられた権限に基く人事委員会又は公平委員会の決定(判定を含む。)及び処分は、人事委員会規則又は公平委員会規則で定める手続により、人事委員会又は公平委員会によつてのみ審査される。
9  (略)

規則で定める不服申立ての手続に関する事項として、情報公開条例に基づく公文書公開決定に対する不服申立てにおける附属機関の審査の手続などが考えられるが、これは実際にも条例で規則に委任している場合が多いのではないだろうか。その他、正式な不服申立ての手続とは別に苦情処理の手続などを設ける場合に、その手続に関する事項を規則で定めることが考えられる。
(5) その他の事項
その他の事項であっても、住民に関係する事項については、規則で定めることが考えられる。その一つとして、住民に対する表彰について触れておく。
住民に対する表彰を定める例規の形式として、兼子・入門(P77)は、規則で定めるのも悪くはないが、条例で定めるのが最も好ましいとし、その方が「表彰される住民も、自治議会立法を根拠にしていると喜びがひとしおと思われる」としている。
表彰の形式によって住民の喜びの度合いが違うということについては疑問を感じるが、ちなみに国においては、政令と同一の効力を有する太政官布告、勅令等によっている。そして、平成13年10月の「栄典制度の在り方に関する懇談会報告書」では、現行の枠組みの中で対応することが可能としており、特に法律で規定することが検討されているといったことはない。
したがって、規則で定めることとして特に問題はないであろう。では、要綱等で定めてもよいかであるが、兼子・入門(P77)は、次のように述べている。

住民を表彰するのに、……「表彰規程」を根拠にする自治体がいぜん少なくないのは、いかがなものか。……もっとも「表彰規程」でも、住民表彰は対外事項ゆえ訓令では良くなかろうと、「告示」形式にしているのはせめてもの救いである……。だが、住民関係事項を行政内規で定めるのだったら、「要綱」として告示化するほうがベターではないか……。

表彰については権利性まではないだろうから、規則で定めなければいけないとまでは言えないだろうが、表彰とは「善行、功労、成果などを世に広く褒め表すこと」(法令用語研究会『法律用語辞典』)であり、住民全員で褒め称えるのだということを考えると規則の方が適当と言うことはできると思う。
さらに、表彰に当たっては対象者の刑罰の有無を確認する必要があろうが、個人情報の保護等の観点からすると、その根拠としては法規である規則のほうが適当であるといった議論もあるのではないかと思う。