例規の形式(7)〜規則の内容(その6)

2 全執行機関に共通する事項
 ・ 財務に関する事項
地方自治法施行令第173条の2は、「この政令及びこれに基づく総務省令に規定するものを除くほか、普通地方公共団体の財務に関し必要な事項は、規則でこれを定める」としている。
財務に関する事項は、予算執行権等を行政委員会等に委任しなければ長のみに関する事項なのであろうが、地方自治法にはその委任を前提とした規定があることからすると(同法第221条)、法律上委任を前提としていると考えることができるし、実際にも委任することが通常と思われるので、規則で定める全執行機関に共通する事項として分類しておく。
財務に関する事項は、内部的な事項であるとも言えるが、住民に関係する場面もあるので、純粋に内部事項とはいえないであろう。
 ・ 特定事業主行動計画を策定する機関
次世代育成支援対策推進法施行令第2項は、次のとおり特定事業主行動計画を策定する機関の一部を定めることを規則に委任している。

次世代育成支援対策推進法施行令
1 (略)
2 前項に規定するもののほか、法第19条第1項の地方公共団体の機関、その長又はその職員で政令で定めるものは、当該地方公共団体の規則で定めるものとし、それぞれ当該地方公共団体の規則で定める職員についての特定事業主行動計画を策定するものとする。
次世代育成支援対策推進法
第19条 国及び地方公共団体の機関、それらの長又はそれらの職員で政令で定めるもの(以下「特定事業主」という。)は、政令で定めるところにより、行動計画策定指針に即して、特定事業主行動計画(特定事業主が実施する次世代育成支援対策に関する計画をいう。以下この条において同じ。)を策定するものとする。
2〜4 (略)

この規定は、規則が全執行機関に共通する事項を定めることに着目してのものであると考えることもできると思うが、住民に関係する事項とは考えにくい部分もある。
 ・ 情報公開条例や個人情報保護条例において執行機関が定めることとしている事項
情報公開条例や個人情報保護条例において執行機関が定めることとしている事項について、長の規則で全執行機関を対象として定めるように条例で委任することが考えられる(出石・理論(P64)参照)。
長の規則でまとめて定めるか、各執行機関がそれぞれ定めるかは、これらの条例に基づく事務を、一義的には長の責任において行うべきものと考えるのか、あくまでも執行機関がそれぞれの責任において行うべきものと考えるのかによると思うが、近年、これらの条例に基づき長に置かれる附属機関の役割を大きくしているような傾向があることからすると、考え方としては前者によっていると言えるのかもしれない。
なお、これらの条例に基づく事項が住民の権利義務に関係することは、疑いがないであろう。
 ・ 文書管理に関する事項
文書管理に関する事項を全執行機関に共通する事項として規則で定めることについては、「規則の活用〜文書管理に関する規程を規則にすることについて」を参照
文書管理に関する事項は、現在では住民の権利義務に大きく関係するようになってきている。
 ・ その他
その他の事項で全執行機関に共通する事項として長の規則で定めることができるものとしては、長に執行機関を統括する総合調整機能があること(地方自治法第147条参照)を考えると、制度上はかなり多くの事項が対象となり得るのであろう。しかし、あまりにも長の規則で規定すると、行政委員会に執行権を認めた趣旨を損なうことにもなりかねない。
一般的には、統一的に定めるべき事項で、住民に関係するものについては、分かりやすさ等を考えると長の規則で定めることが適当な場合が多いように感じるし、他方、内部的な事項については、統一的に定める必要性はあまりないであろうし、各執行機関がそれぞれ定めることを原則と考えればいいように感じる。例えば、文書管理に関する事項については、文書処理の手続と併せて「文書規程」といった形で訓令で定めている自治体も多いと思うが、これを上記のように長の規則で定めることとしても、文書処理の手続の部分は各執行機関の訓令のままで良いのではないかと思う。
3 雑感
これまで規則で規定すべき事項として長々と述べてきたが、これは、規則が条例と並ぶ法形式であるという法制度上の前提があるにもかかわらず、規則の役割が低下している現状があることから、規則の活用範囲を見直そうという視点からのものである。
しかし、これまで記載してきた事項であっても、法令で委任されている事項以外の事項については、必ずしも規則で規定しなければいけないというものでもないであろう。
したがって、規則を用いるのは法令又は条例で委任されている事項を規定する場合のみとすること(法律に対する命令(政・省令等)と同じように規則を位置付けることとすること)も、その適否は別にしても、考え方としてあってもいいのかもしれない。