例規の形式(10)〜要綱(その3)

(「2 要綱の内容と公表」の続き)
(3) 予算執行の具現化としての「補助(給付)要綱」
補助金の交付は、要綱が用いられる主要な分野であるということができるであろう。そして、この補助要綱は、告示という形をとることも多いかと思う。
例規の形式(5)〜規則の内容(その4)」で記載したように、権利性を認めたいものについては、規則で規定すべきと思うが、それ以外のものは、要綱という形式になる。そして、要綱で定める場合でも、その対象者にはあらかじめ周知する必要があることについては異論はないであろうから、その方法が問題になってくる。
まず、補助金の交付対象となる者に周知するとしても、その者が特定されていて、個別に通知等を行えば足りるのであれば、必ずしも告示をする必要はないことになる。しかし、その者が広範にわたるようなときは、公示等の方法によらなければならないであろうが、その場合に告示という形式をとらなければいけないのであろうか。
告示という形式をとる場合には、例規審査担当部局の審査を行い、例規集に登載するのが通常だと思う。そして、国の紐付きの補助金の場合、年度末の要綱の改正が結構あり、手間がかかったこともあって、合理化できないか考えたことがある。贈与である補助(給付)金の要綱の審査というものは、私は基本的に必要ないものと思っているし、例規集に登載することもあまり意味がないと思っている。木佐・理論(P340)では、例規集の登載を情報公開の手段として考えているようだが、情報公開という観点では、私は補助金の交付に関しては、例規集の登載というのはあまり意味があることとは思えず、ホームページ等でメニュー的に提示するなどの形をとった方が適当だと思っている。そこで、思いついた一つの方法は、公告という形式であった(もちろん、公告についても、例規審査担当部局の審査を受けることになっているケースもあるのであろうから、その場合には、例規審査を省力化することができないのであるが)。そこで、他の自治体の例規を少し調べてみたことがあったが、公告という形をとっているところもあったように記憶している。
補助(交付)要綱については、公表の手段として告示という形をとっているのが一般的かもしれないが、必ずしもそうしなければいけないというものでもないであろう。もちろん、告示という形をとっている補助(交付)要綱の形式を改めることは、現実的には困難であろう。しかし、それは所与のものではないと考えることは大切ではないかと感じる。
(4) 首長の私的諮問機関や組織横断的庁内組織の設置のための「組織要綱」
組織関係について要綱を用いる場合に問題とされるものとして、長等の私的諮問機関の要綱設置がある。これについては、「自治体の組織(9)〜附属機関(その2)」を参照。なお、兼子・入門(P46)は「一時的住民参加会議であれば、常設『機関』とちがう住民参加手続として、要綱設置で合法と解される」とし、同(P81)は「首長の私的諮問機関だとして住民参加の懇談会等を要綱設置することは問題であるが、提言書を出して解散する臨時的・一時的会議組織であれば、恒常的な『機関』でなく住民参加手続の一場面として要綱設置でよいと解される」としている。しかし、「臨時的、速急を要する機関であつてもすべて条例によらなければ設置できない」とする行政実例*1がある。
なお、首長の私的諮問機関に関する設置要綱を公表すべきというような見解は見たことがない*2。しかし、ホームページ等でその委員名簿と併せて公表している例はある。このように政策的に公表するかどうかは別として、私は、上記の記事でも触れているが、この私的諮問機関を「組織」とは考えないので、公表ということは問題にならないと思っている。
それ以外の組織関係で、規則等で定めないものについては、機関等に対する命令という意味もあるであろうから、要綱ではなく訓令で定めることが本来なのであろう。なお、訓令についても公表という問題があるが、これについては後述する。

*1:昭和27.11.19自行行発第139号

*2:要綱を告示化すべしという主張には、それを念頭に置いているのかもしれないが。