例規の形式(12)〜その他(その1)

今回から、規則及び要綱以外の例規を中心に問題となりそうな事項について、何点か取り上げてみたい。
1 行政委員会の規程の発令形式
地方自治法第138条の4第2項は「普通地方公共団体の委員会は、法律の定めるところにより、法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる」としている。この行政委員会が定める規則の発令形式は一般に「○○委員会規則」とされているが、行政委員会が定める規程の発令形式は画一的な扱いがされていないようである。
行政委員会の規則その他の規程の制定権限は、同項に「法律の定めるところにより」とあるように、同項の規定以外に個別の法律の規定によらなければいけないこととされている(松本・逐条P452参照)。そこで、まず、規則その他の規程を制定することができる行政委員会とその根拠規定を次に掲げる。

<規則>
・ 教育委員会地方教育行政の組織及び運営に関する法律第14条第1項 教育委員会は、法令又は条例に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、教育委員会規則を制定することができる。)
・ 人事委員会又は公平委員会(地方公務員法第8条第5項 人事委員会又は公平委員会は、法律又は条例に基づきその権限に属せしめられた事務に関し、人事委員会規則又は公平委員会規則を制定することができる。)
・ 公安委員会(警察法第38条第5項 都道府県公安委員会は、その権限に属する事務に関し、法令又は条例の特別の委任に基いて、都道府県公安委員会規則を制定することができる。)
・ 労働委員会労働組合法第26条第2項 都道府県労働委員会は、前項の規則に違反しない限りにおいて、その会議の招集に関する事項その他の政令で定める事項に関する規則を定めることができる。)
<規程>
・ 選挙管理委員会地方自治法第194条 この法律及びこれに基く政令に規定するものを除く外、選挙管理委員会に関し必要な事項は、委員会がこれを定める。)
・ 収用委員会(土地収用法第59条 この法律又はこの法律に基く条例に規定する事項を除くの外、収用委員会の会議その他運営に必要な事項は、収用委員会が定める。)
・ 固定資産評価審査委員会(地方税法第436条第2項 前項の条例で定めるべき事項は、当該条例の定めるところによつて、固定資産評価審査委員会の規程で定めることができる。)
(参考:企業管理規程)
・ 地方公営企業地方公営企業法第10条 管理者は、法令又は当該地方公共団体の条例若しくは規則又はその機関の定める規則に違反しない限りにおいて、業務に関し管理規程(以下「企業管理規程」という。)を制定することができる。)

上記のとおり、行政委員会が定める規程については、発令形式が明確にされていないものもある*1。このため、その発令形式が統一されておらず、例えば、告示という形式で定めている自治体もあるであろう。
ただ、「規則」と「規程」は、区別する程の違いはないのではないかと思う。規程には法規性がないという見解もあり、そのように考えれば両者には大きな違いがあるのだが、法規性があるという見解もある。例えば、長谷川・立法(P272)は「規則その他の規程の制定権を付与することの意味は、それぞれ規定するところにより、伝統的な意味での法規命令の制定権を与えたものと考えるのが適当ではないかと思われる」とされており、このように考えると、規則と規程を区分する実益は実際にはあまりないように感じる。
そうすると、行政委員会の定める規程は、その規則とパラレルに考えるのが素直であり、その発令形式は、「○○委員会規程」とするのが一番良いのではないかと思っている。長谷川・立法(P245)は「『規則』あるいは『規程』という言葉は、我が国における法令の形式の名称又は個々の法令の題名に用いられているものである」としており、現にそのような発令形式を用いている自治体もあったかと思う。
上記の行政委員会の規程の発令形式を告示とすることについては、地方自治法第138条の4第2項が「規則その他の規程」としていることや、訓令等の題名に「規程」という言葉が用いられていたりすることを考慮して、「規程」とすることに躊躇した結果なのかもしれない。しかし、告示については、法令の根拠はなく当然に制定できるものとされているため、特に行政委員会に規則その他の規程の制定権が認められていることからすると、あまり適切ではないのではないかと感じている。

*1:松本・逐条(P449)は、「規則や規程という明確な一定の形式及び名称が定められていなくても、たとえば、選挙管理委員会選挙管理委員会に関し必要な事項を定めたもの(法194)、収用委員会(土地収用法59)等が一定の所掌事務について定めた法的な規定などをも意味する」としている。