例規の形式(13)〜その他(その2)

2 例規の題名と発令形式
例規の題名は、条例であれば「○○条例」、規則であれば「○○規則」というように、その形式の名称を付けるのが一般的である。
しかし、訓令などでは「○○規程」という題名が付されることがある。服務規程とか文書規程といった訓令は、結構ありそうである。これは、単に語呂でそのようにしている部分が大きいのではないだろうか。つまり、これらの題名を「○○訓令」とするのであれば、「服務訓令」や「文書訓令」だと語呂がよくないので、「服務に関する訓令」や「文書(事務)に関する訓令」とすることになろうが、簡潔にしようとすれば「服務規程」とか「文書規程」の方が座りは良い。
ところで、このように題名と発令形式が異なる場合があることから、公布規定等において、「この訓令は、……」とするか、「この規程は、……」とするか疑義があるようである。しかし、題名と形式が異なる場合は結構あるのであって、法令でも、法律は「○○法律」とせずに「○○法」とする場合もあるし、政令や省令は「○○法施行△△」とする場合には、それぞれ「○○法施行令」、「○○法施行規則」とされている。そして、省令が「○○法施行規則」とされるため、自治体の法施行のための規則は「○○法施行細則」とするのが一般的となってもいる。さらに、「規程」が法令の題名とされることもある。例えば「地方自治法施行規程(昭和22年政令第19号)」などは一応馴染みがあるであろうが、近年制定されたものでも「国家公務員倫理規程(平成12年政令第101号)」などがある。このような場合に、公布規定等は例えば「○○法」では「この法律は、……」とされ、「○○法施行規則」では「この省令は、……」とされるのと同様に、「○○規程」の訓令でも「この訓令は、……」とするのだと考えておけばいいであろう(北海道町村会・法務相談事例集―「規程、要綱」等と訓令の使いわけについて参照)。
このように、例規の題名と発令形式が異なる名称となることもあり得るとしても、一つの題名を複数の発令形式で用いること(例えば「要綱」という題名を告示と訓令で用いるなど)は避けた方が良いように思う。そこで、首長部局において発令形式と題名の関係として、次のようにすることが考えられる。

発令形式 題  名
条例 条例
規則 規則、細則(法律を施行するためのもの)
告示 要綱(規程形式をとらないものは適宜)
訓令 訓令、規程

行政委員会もこれに準じて考えることはできるであろうが、「例規の形式(12)〜その他(その1)」で記載したように、行政委員会の規程の発令形式を「○○委員会規程」としたときは、訓令で規程という名称は避けるべきではないだろうか。
また、要綱を発令形式とする場合には、当然これと異なった整理が必要になってくる。
3 訓令の公表
訓令とは、吉国一郎ほか『法令用語辞典(第八次改訂版)』によると「上級官庁が下級官庁の権限の行使につき、これを指揮するために発する命令をいう」としている。つまりあくまでも内向きのものである。そうすると、理屈としては、訓令というものはそもそも公表する必要はないということになる。兼子・入門(P84〜)では「行政内部『訓令』である『規程』」という項目の中で、公表を要する規程については「要綱」の方がフィットするとしているが、これは同じ考え方のように思える。
しかし、一般的には訓令は公示されているようであるし、国においても同様である。実際、訓令として定められているものの中には公示すべきものがあることも事実であろう。例えば、「例規の形式(3)〜規則の内容(その2)」では、事務に委任について、地方自治法第171条第4項を引用して、法令においては告示は必要だが、規則で定めることまでは予定していないのではないかということを記載した。ただ、事務の委任は当該機関又は職員に対する命令でもあるわけだから、例規の形式としては訓令が適当ということになろう。そうすると、訓令で定めた事務の委任について告示しようとすると、一番簡単な方法は、その訓令自体を公示してしまえということになる。
ただ、訓令を公示するということは、「これは職員に向けたものだけれど、一応住民の皆さんにもお見せしますね」と言っていることになるのではないかと思うが、事務の委任は、同記事で記載したように、一応見せるといった類のものではなく、住民が知っていてしかるべき事項であり、当然公示すべきものだと思う。では、要綱で告示すればいいかというと、要綱で当該機関又は職員に対する命令という意味を持つものかどうかは、甚だ疑問を感じる。
そうすると、このような公示をすべき訓令は、訓令は訓令として定め、それとは別に告示を行うという迂遠な方法を避けるのであれば、規則で定めることになるのであろう。