続・新旧対照表方式(4)〜改め文

新旧対照表方式を導入している自治体の方式を見ると、従来方式において書かれる「『…』を『…』に改める」といった改め文をどうするかという点が大きく異なっているようである。
なお、改め文を置かないこととしている自治体もあるようであるが、そうすると、旧規定全体が新規定全体に置き換わると考えることになり、規定全体をチェックする必要が生じる。そして、改正部分に下線を引くのであれば、溶け込んだ後の規定にも下線が引かれることになるのではないかといった問題も生じることになるので、何らかの改め文を置くべきだと思う。
では、どのような改め文を置くかであるが、まず都道府県で採用されている方式を取り上げて検討した後、市町村で採用されている方式を若干取り上げることにする。
1 都道府県で採用されている方式
都道府県で採用されている新旧対照表方式は、3つに大別することができる。
 (1) 鳥取県の方式(新潟県も同様)

○○条例(……条例第…号)の一部を次のように改正する。
次の表の改正前の欄中条、項、号及び号の細目の表示に下線が引かれた条、項、号及び号の細目(以下「移動条項等」という。)に対応する同表の改正後の欄中条、項、号及び号の細目の表示に下線が引かれた条、項、号及び号の細目(以下「移動後条項等」という。)が存在する場合には、当該移動条項等を当該移動後条項等とし、移動条項等に対応する移動後条項等が存在しない場合には、当該移動条項等(以下「削除条項等」という。)を削り、移動後条項等に対応する移動条項等が存在しない場合には、当該移動後条項等(以下「追加条項等」という。)を加える。
次の表の改正前の欄中下線が引かれた部分(条、項、号及び号の細目の表示、削除条項等並びに様式及び別表並びにこれらの細目の表示を除く。以下「改正部分」という。)に対応する次の表の改正後の欄中下線が引かれた部分(条、項、号及び号の細目の表示、追加条項等並びに様式及び別表並びにこれらの細目の表示を除く。以下「改正後部分」という。)が存在する場合には、当該改正部分を当該改正後部分に改め、改正部分に対応する改正後部分が存在しない場合には、当該改正部分を削り、改正後部分に対応する改正部分が存在しない場合には、当該改正後部分を加える。
次の表の改正前の欄の表中太線で囲まれた部分(以下「改正表」という。)に対応する次の表の改正後の欄の表中太線で囲まれた部分(以下「改正後表」という。)が存在する場合には、当該改正表を当該改正後表に改め、改正表に対応する改正後表が存在しない場合には、当該改正表を削り、改正後表に対応する改正表が存在しない場合には、当該改正後表を加える。
次の表の改正前の欄中別表及び様式並びにこれらの細目の表示に下線が引かれた別表及び様式並びにこれらの細目(以下「移動別表等」という。)に対応する次の表の改正後の欄中別表及び様式並びに細目の表示に下線が引かれた別表及び様式並びにこれらの細目(以下「移動後別表等」という。)が存在する場合には、当該移動別表等を当該移動後別表等とし、移動別表等に対応する移動後別表等が存在しない場合には、当該移動別表等を削り、移動後別表等に対応する移動別表等が存在しない場合には、当該移動後別表等を加える。
 → 新旧対照表(左欄:改正後、右欄:改正前)
(島田・論文参照)

 (2) 岩手県の方式

○○条例(……条例第…号)の一部を次のように改正する。
 → 新旧対照表(左欄:改正前、右欄:改正後、なお、新旧対照表の備考欄に「改正部分は、下線の部分である。」という文章を記載)

 (3) 愛媛県の方式(香川県も同様)

○○条例(……条例第…号)の一部を次のように改正する。
次の表の改正前の欄に掲げる規定を同表の改正後の欄に掲げる規定に下線で示すように改正する。
 → 新旧対照表(左欄:改正後、右欄:改正前)

 (4) 検討
鳥取県の方式は、従来方式と同様の考え方をしており、字句の改正はあくまでも改正として「改める」と表記し、条の移動はあくまでも移動として「とする」としている。
これに対し、岩手県愛媛県の方式は、文言は多少違うが、どちらも改正として考えているように思われる。これは、条数を数字ではなく絵として捉えることになり、3以上の条をまとめて移動する場合には、中間の条もすべて表記する必要がでてくる。もちろん、この点は、それで構わないというのであれば、それだけのことである。*1
しかし、岩手県愛媛県の方式だと、表や様式の改正について正確な改正ができなくなるのではないかと思う。例えば表の項を削る場合、改正後の欄でその部分に対応する部分にはスペースが生じたりするため、改正後の表がどのようなものになるのか疑義が生じることになる。
岩手県等の考え方は、通常は新旧対照表については特に説明がなくても改正前の条文と改正後の条文を表したものとして見ているので、特に詳細な改め文を置かなくても所与のものとして問題ないという判断があるのかもしれない。しかし、新旧対照表方式は慣例となっているとはいえないので、岩手県等の方式による場合には、例えばその方式について「条例等の一部を改正する方法を定める条例」を定めるような措置*2を講じておかない限り、適切さに欠けるのではないかと感じている。
したがって、私は、現状では鳥取県の方式がベターではないかと思っている。ただし、鳥取県の方式における改め文は上記のとおり複雑であり、実際にも改め文を見る人はほとんどいないだろうから、そのような改め文を新旧対照表の前に置くことはどうかという意見もあるだろう。そうすると、例えば岩手県の方式のように表に備考を設けて、そこで表の読み方として記載することとする案も考えられる。
しかし、この辺りのことは、新旧対照表ですべて改正することができるのかというようなことについて見た後に判断する必要があるので、ここでは保留しておき、改め文の文章をどのようにするかということも含めて後に触れることとする。
2 市町村における取扱い
 (1) 北海道雨竜町の例
北海道雨竜町では、「○○条例の一部を別紙のように改正する」という改正文を置き、別紙で「○○条例の一部を改正する条例新旧対照表」という名称を付した新旧対照表と附則を記載している。
改め文を置かない弊害は、冒頭に触れたとおりである。
さらに、別紙という形にすると、そもそも条例等の公布を公報の掲載による場合にはとり得ないだろう。
なお、形式的には、附則は別紙に置くのでなく、上記改正文に続けて置いた方がいいのではないかと思う。
 (2) 春日部市の例
春日部市では、次のような改め文を置くこととしている。

○○条例(……条例第…号)の一部を次のように改正する。
(1) 次の表中、改正前の欄の条、項又は号(以下「改正前の条等」という。)の表示及びそれに対応する改正後の欄の条、項及び号(以下「改正後の条等」という。)の表示に下線が引かれた場合にあっては、当該改正前の条等を当該改正後の条等とする。
(2) 次の表中、改正前の条等に対応する改正後の条等が存在しない場合にあっては、当該改正前の条等を削る。
(3) 次の表中、改正後の条等に対応する改正前の条等が存在しない場合にあっては、当該改正後の条等を加える。
(4) 次の表中、改正前の欄の下線が引かれた字句をそれに対応する改正後の欄の下線が引かれた字句に改める。ただし、第1号に掲げる場合を除く。
  → 新旧対照表

この方式だと鳥取県の方式に比べ見やすいことは事実であるが、2点程指摘をしておきたい。
1点目は、改め文を号で書いているが、それだと新旧対照表が上記の場合には第4号の表のように見えるので、適当ではないだろう*3
2点目は、上記のように改め文を簡略化するために、条等の削除と追加の場合には、削除等をした条等には下線を引かないという工夫をしている。この点についても、多少考えてみる問題があると思うが、後に改め文の文章について改めて触れるときに併せて取り上げることとする。

*1:実際、岩手県等では、3以上の条をまとめて移動する場合には、中間の条も省略することなく、条名をすべて記載している。

*2:訓令の制定では足りないと思う

*3:厳密に言うと、鳥取県の方式にも同様な問題はあるのだろうが。