続・新旧対照表方式(5)〜新旧対照表

新旧対照表は、どこの自治体においても参考資料としては作成しているかと思われるので、実際に新旧対照表方式を導入する場合には、その自治体において作成されているものをベースに考えるのであろう。
まず、改正後の欄と改正前の欄のどちらを左欄にするかについては、「続・新旧対照表方式(4)〜改め文」で記したとおり、岩手県のみ改正前の欄を左欄とし、その他の県では改正後の欄を左欄としている。当然のことながら、改正前の欄にある規定を改正後の欄にある規定に改めるわけだから、まず改正前の欄を左欄とすることにも一理あるが、重要なのは改正後であることからすると、改正後の欄を左欄とする方が適当ではないかと思うし、そのように作成している自治体が多いのではないだろうか。
なお、武蔵野市では、新旧対照表を左から「改正前」「改正後」「説明」の3欄に区分し、説明欄には、「字句の改正」「条の追加」「項の削除」「項の繰上げ」などと記載される方式をとっているが、この方式の形式的な難点として、表を3欄に区分するため、横のスペースが狭くなってしまうことが挙げられるだろう。
その他の事項については、島田・論文に記載されている鳥取県における取扱いを引用し、それに対しコメントをしていくこととしたい。

字句の改正等をする場合には、改正前欄にあっては改正される字句及び削除される字句に、改正後欄にあっては改正後の字句及び追加される字句に、それぞれ下線を引くこと。

新旧対照表を作成する場合の一般的な下線の引き方かと思われるが、これと多少異なるやり方をしているのが愛媛県である。
愛媛県では、例えば字句を削除する場合には、改正後の欄では、削除する文字数を空欄として、その部分に下線を引くなどして、改正後の欄と改正前の欄を重ね合わせた場合に、同一の文言は同じ位置になるようにしている*1。確かに見やすいことは事実であり、参考資料として作成する場合にはより適切であると思うが、公文書として作成する場合を考えると、ここまでやるとちょっと作為的な感じがする。

・ 改正される条単位で新旧対照表に記載することとし、改正等のない項の内容は「略」とすること。この場合において、略される項が2つ連続である場合には、「及び」でつなぎ、3以上連続した項を略する場合には、「〜」で結ぶこと。また、第1項を略す場合には、条番号の後に1字空けて「略」と記載すること。
・ 号の内容を改正する場合には、当該号の存する項の内容を改正しない場合であっても当該項の内容が略さないこと。この場合においても、改正しない号の内容は略すこと。

2点程気になることがある。
1点目は、略される項が2つ連続である場合には、「及び」でつなぎ、3以上連続した項を略する場合には、「〜」で結ぶこととしていることである。2つ連続の場合は「・」でもいいと思うし*2、「及び」にするなら、3以上連続の場合は「から……まで」にすべきだと思うのは、形式的に過ぎるだろうか。なお、3以上連続する場合は、目次等における表記の仕方にならって「−」とするほうが適当かもしれない。
2点目は、以前(「新旧対照表方式(下)」)も記載したが、「略」の記載である。公文書に意味のない記載をすることに、私は非常に違和感がある。現実的に考えてみた場合、このような方法と違った方法をとることは難しいとは思うのだが、例えば、次のように改正後の欄、改正前の欄それぞれ条名等の欄と規定内容の欄を設け、項あるいは号等の単位で規定内容を記載していくことで、改正のない項等の表記を記載せず、したがって「略」という表記をしなくてもすむ方法は考えられると思う*3

改正後改正前
条名等規定内容条名等規定内容
第○条第△項……○○……。第○条第△項……△△……。

条の追加をする場合には、直前の条(ある場合には、見出しも)を、内容を略して記載すること。

直前の条を記載するのは、追加される条の位置を明確にするためであろう。そうすると、例えば直後の条に改正があり、その条が記載されていると追加される条の位置は明確であるから、あえて直前の条にこだわる必要はないだろう。

条と条の間は、1行空けること。

岩手県愛媛県は、条と条の間を空けないこととしている。
これは、それぞれの自治体で決めればよい問題だろうが、分かりやすくするという観点からすると、連続する条と条の間は空けないこととし、連続しない条と条の間は1行空けることとするような方法も考えられるだろう。

(表関係)
・ 表の項又は欄の数が増減する場合には、改正、削除、又は追加すべき箇所を太線で囲むこと。この場合に、太線で囲まれた部分に改正等すべき字句があっても、その部分には、下線を引かないこと。
・ 表中の太線で囲まれた部分の前の項(前の項がない場合等には、後の項)については、内容を略さないこととし、その他の項については、内容を略すること。

鳥取県の方式でも、表の改正(様式の改正も同様だと思うが)については、改正後の表の姿をきちんと表すことができるのか疑義が出てしまうだろう。
なお、表、特に別表の改正については、新旧対照表で改正するのでは、大変な場合がある。実際、大部な別表の改正については新旧対照表で改正していない例もあるので、この点については次回に改めて記載することとする。

*1:このような新旧対照表は、地方税法の改正の際に国が作成するもので見たことがある。

*2:例えば愛媛県では、「・」とされている。

*3:改正部分には下線を引くことになる。