続・新旧対照表方式(7)〜附則

新旧対照表方式における附則とそれに関連することについて、鳥取県の方式を基に考えてみたい。
島田・論文では、鳥取県における一部改正の附則の文例については、従来の方式と原則として変更はないとしている。
しかし、次のように注意が必要な点があるとしている。

ただし、改正の一部の施行日を分ける場合には、従来の改正方式であれば「……改正規定」と指定して施行日を分けていたが、今後は、改正規定自体が存在しなくなるため、「……改正」と指定することとなる点に注意が必要である。
(例)
この条例は、公布の日から施行する。ただし、第5条の次に1条を加える改正は、平成○年×月○日から施行する。

2点程気になる点を述べたいと思う。
1点目は、「第5条の次に1条を加える……」としている部分に関してである。従来方式では、条の追加の場合には「第5条の次に次の1条を加える」という改め文が置かれるので、「第5条の次に1条を加える……」とすることは当たり前と言える。これに対し、鳥取県の方式では、条の追加の場合には次のような改め文が置かれる。

次の表の改正後の欄中条の表示に下線が引かれた条(以下「追加条」という。)を加える。

そうすると、上記の例で言うと「第5条の2を加える……」とする方が自然な感じがする。
2点目は、「……改正」としている部分に関してである。従来方式では、施行期日を書き分ける場合は、あくまでも原則として規定(改正規定)を単位としている。
もちろん、ある条の改正内容が複数ある場合に、その中の特定のものだけ施行期日を変えたい場合もあり、その場合には「第○条の改正規定(『…』を『…』に改める部分に限る。)」であるとか、「第○条の改正規定中『…』を『…』に改める部分」という特定の仕方をすることになる。そうすると、施行期日を書き分ける場合に、特定の「部分」を単位として施行期日を書き分けることも許容しているのであろうが、改正する「部分」が集まって一つの改正規定を構成しているのであるから、そのような特定の仕方もあまり違和感はない(なお、春日部市は、「……部分」という特定の仕方をしている)。
それに対し、「……改正」としてしまうと、この「改正」は、なにか行為か事実のようなものを意味しているように思えるのだが、それは「規定」とは異質のものであり、その行為か事実みたいなものだけ独立して異なる期日に施行されるというように考えることが、従来方式に慣れているせいか、どうもすっきりしない。
そして、このことは、新規制定の例規や一部改正でも二段ロケット方式のものと比較して考えると、気持ち悪さを超えて、少しおかしいことになってくる。これらのものについて施行期日を書き分けるときは、やはり従来方式と同様に「……。ただし、第○条の規定は、……」というように、規定を単位として考えるのであろう。そして、二段ロケット方式の条のなかで、さらに特定の改正内容だけ施行期日を書き分けたい場合には、それも「……改正」と指定するのであれば、「……。ただし、第○条の規定(……に改める改正に限る。)、……」とでもするのだろうか。これだと、語感もよくないし、「規定」と「改正」とは異質なものなので、その異質なもので限定をすることは適当とは思えない。このような場合には、やはり「……。ただし、第○条の規定(……に改める部分に限る。)は、……」というようにすべきで、そうすると、単に「……改正」とする場合とでは、整合が取れなくなる。
さらに、鳥取県では、一部改正条例の一部改正を行う場合に「○○条例の一部を改正する条例第○条の規定中、○○条例第○条の改正規定を削り、同条例第×条の改正規定を次のように改める。」といった改め文を置いて所要の改正を行っているが(亀井一賀「条例改正における新旧対照方式(鳥取県方式)の導入とその後」『自治体法務NAVI Vol.6(2005年8月25日発行)』)、この場合に「……改正規定」という特定の仕方をしていることとも整合が取れていないと思う。
以上を踏まえ、あくまでも従来方式と同様に規定(改正規定)を単位とする方法を考えてみたい。つまり、新旧対照表で記載している条等に関する改正については、あくまでもその条の改正規定と考えるようにすることである。そのためには、改め文を工夫する必要がある。例えば、鳥取県では、次のような改め文が置かれる。

次の表の改正前の欄中下線が引かれた部分(以下「改正部分」という。)に対応する同表の改正後の欄中下線が引かれた部分(以下「改正後部分」という。)が存在する場合には、当該改正部分を当該改正後部分に改め、改正部分に対応する改正後部分が存在しない場合には、当該改正部分を削り、改正後部分に対応する改正部分が存在しない場合には、当該改正後部分を加える。

この冒頭の部分を「次の表に掲げる規定について、同表の改正前の欄中……」というように「規定」という言葉を補えば、新旧対照表に掲げてある規定ごとに改正規定があるというように考えても許されるのではないだろうかと思う。