条の追加等をする場合の改正

2007年6月15日付けの記事に、ど素人さんから次のようなコメントをいただいた。

例規の改正って、条や項を改正する場合、どうやってまず考えていったらいいんでしょうかね?
どうも、どこから改正していったらいいのかわけわかんなくなるのはなぜでしょう?どういうふうに基本的に改正文を考えていったらいいんでしょうか?

改正は、前の条から順番に行うことが原則ですが、条の追加や移動をする場合には例外的な扱いをするため、その辺りがど素人さんの悩みの主な点なのではないでしょうか。そこで、この場合の基本的な改正方式について取り上げてみます。
まず、法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P340〜)に記載されている改正方式の基準について、この場合に関連のあるものを次に記載しておきます。

1 本則及び附則の条(項・号等)の改正は、条名(項番号等)の若いものから順に行う。例外として、条(項・号等)の追加をするためのスペースを確保する必要が生ずる場合には、後ろの条(項・号等)から改正、移動を行うことになる。
2 既存の条(項・号等)の間又は冒頭に新たな条(項・号等)を追加する場合には、先に追加する場所を空ける(スペースを設ける)措置を講じてから行う。
3 既存の条(項・号等)を移動させる場合に、移動させない他の条(項・号等)を飛び越えることとなるような方式は採らない。

この基準によると、例えば4項からなる条について、第2項から第4項までの語句を改め、さらに第3項として1項を追加する場合には、次のようになります。

第○条第2項中「A」を「B」に改め*1、同条第4項中「C」を「D」に改め、同項を同条第5項とし、同条第3項中「E」を「F」に改め、同項を同条第4項とし、同条第2項の次に次の1項を加える。
3 ……。

この場合は、第3項を追加する必要があるため、そのスペースを設けるため、既存の第3項を第4項にする必要がありますし、さらにそのためのスペースを設けるため、既存の第4項を第5項にする必要があるので、まず第4項を第5項にし、次に第3項を第4項にしてから第3項を追加するわけですが、字句の改正は、移動する直前に行うということになります。
また、既存の条の第2項と第3項を入替えたい場合には、上記基準の3によると、「第○条中第2項を第3項とし、第3項を第2項とする。」ということはできず、第2項を削って第3項を第2項とした後に第3項の追加を行うか、第3項を削って第2項を第3項とした後に第2項の追加を行うか、いずれか合理的な方法で行うことになります。
理屈上は、改正は同時に行われるものとされているので、例えば上記の例を次のようにしても改正は行われることにはなると思います。

第○条第2項中「A」を「B」に改め、同項の次に次の1項を加える。
3 ……。
第○条第3項中「E」を「F」に改め、同項を同条第4項とし、同条第4項中「C」を「D」に改め、同項を同条第5項とする。

しかし、このようなやり方をしないのは、例えば「E」を「F」に改めるのが、旧第3項の字句を改めるのか、新第3項の字句を改めるのかといった疑義が生じることを避けるためでしょう。つまり、以前(2007年8月31日付けの記事)記載したことがあるのですが、どのように改正されるのか、一般の人(あるいは法令集を編纂する業者の人)に疑義が生じないように分かりやすくするため、ルールが決められているということが言えると思います。

*1:第2項の字句の改めは、第3項を追加する際に、「……、第2項中「A」を「B」に改め、同項の次に次の1項を加える。」とする例もあるようです。これは、第2項を2度取り上げるのを避けるという趣旨なのでしょうが、本文中の書き方でよいのではないでしょうか。