法令で委任された事項を定める例規〜消防法第9条の2第2項(2)

○ ある自治体の条例について考える
この一連の記事で、特に明示しない場合、法令の名称を次のように省略して用いることかがある。

「法」
消防法
「改正法」
消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律(平成16年法律第65号)
政令
消防法施行令
「省令」
住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令

1 全般的な事項
 (1) 消防法第9条の2第2項は、条例で定める基準は政令で定める基準に従うこととしている。この場合、政令で定められた基準をそのまま条例の基準とするのであれば当該政令の規定をそのまま書き写せばいいだけである。
しかし、この消防法の規定の場合は、政令から省令へ委任されている事項があり、それらの規定をそのまま書き写し難い部分もあるので、その辺りをどのように書いていくか多少考えてみる必要がある。
 (2) 法第9条の2第2項の書き方は「〜は、条例で定める」とされている。これが「条例で定める○○」となっていれば、「法第9条第2項に規定する(の)条例で定める○○は、〜」と書いていくのが通常であろうが、このような書き方の場合は、委任規定を明記しない例も結構あり、ある自治体の条例の規定もそのようになっている。
もちろん条例全体の書き振りとの兼ね合いがあるが、一般的には、特定の規定のみを受けた例規で趣旨規定にその条項が明記されたようなものでなければ、委任規定を明示した方が分かりやすいと思うので、できるだけ委任規定を明記すべきではないかと思う。
同項のような規定を受けて書く例としては次のような例があり、私は特別会計に関する法律施行令のような書き方の方がいいように思う。なお、「政令で」を省略して単に「○○の規定により定める」としてもいいのではないかと思う。

<「○○の規定により政令で定める」とする例>
特別会計に関する法律
(利益及び損失の処理)
第188条 貿易再保険特別会計において、毎会計年度の損益計算上生じた利益又は損失は、翌年度に繰り越して整理するものとする。
2 前項の規定によるほか、損益計算の方法については、政令で定める。
特別会計に関する法律施行令
(損益計算の方法)
第84条 法第188条第2項の規定により政令で定める損益計算の方法については、当該年度における収納済み及び収納未済の法第184条第1号イに規定する再保険料、同号ロに規定する回収金及び同号チに規定する納付金並びに附属雑収入(前年度末において収納未済であったもの(経済産業大臣財務大臣に協議して定める場合に係るものを除く。)を除く。)、前年度末における未経過再保険料及び支払備金並びに異常危険準備金からの戻入れをもってその利益とし、当該年度における支出済みの同条第2号イに規定する再保険金、当該年度における支出済み及び支出未済の事務取扱費、借入金、一時借入金及び融通証券(法第192条第2項の規定により借り換えた一時借入金及び発行した融通証券を含む。)の利子、融通証券の発行及び償還に関する経費その他の諸費(前年度末において支出未済であったものを除く。)、当該年度末における未経過再保険料及び支払備金、異常危険準備金への繰入れ並びに雑損をもってその損失とする。
2  (略)
<「○○の規定により定めるべき」とする例>
建築基準法
(この章の規定を実施し、又は補足するため必要な技術的基準)
第36条 居室の採光面積、天井及び床の高さ、床の防湿方法、階段の構造、便所、防火壁、防火区画、消火設備、避雷設備及び給水、排水その他の配管設備の設置及び構造並びに浄化槽、煙突及び昇降機の構造に関して、この章の規定を実施し、又は補足するために安全上、防火上及び衛生上必要な技術的基準は、政令で定める。
建築基準法施行令
(法第31条第2項等の規定に基づく汚物処理性能に関する技術的基準)
32条 屎尿浄化槽の法第31条第2項の政令で定める技術的基準及び合併処理浄化槽(屎尿と併せて雑排水を処理する浄化槽をいう。以下同じ。)について法第36条の規定により定めるべき構造に関する技術的基準のうち処理性能に関するもの(以下「汚物処理性能に関する技術的基準」と総称する。)は、次のとおりとする。
 (各号略)
2・3 (略)

 (3) 政省令、特に省令における住宅用防災機器に関する基準の規定の仕方は、住宅用防災警報器と住宅用防災報知設備に共通する事項をまず記載し、その後にそれぞれに特有の事項を記載している。これに対し、条例は、両者をはっきりと分けて記載している。
考え方としてはどちらもありだろうが、特に理由がなければ、法令の下請けの場合は法令の書き方にならって書いた方が、後々法令改正に伴って改正を行う必要がある場合に作業が楽になるので(必ずしも、その例規に精通した人が改正作業を行うとは限らない)、原則としてそのように考える方がよいと思う。