「例規」と「法規」

このブログでは、条例等の審査を表す言葉として「例規審査」という言葉を使っている。「法規審査」と呼ぶのが一般的かもしれないが、あえてその言葉を使わなかったのは、単に「法」という言葉を使うのが嫌だったからである。
この「例規」と「法規」について、兼子仁『新地方自治法』(P184〜)で、次のように整理されている。

例規」という国語は、がんらいは“慣例規範”(慣例に基づく規範)の意味のようで、たしかに戦前の市町村自治体は本格立法権を持たず「慣例」に基づく行政を行なうのにとどまっていたのだった(市制2・町村制2)。そして例規集に載る「例規」は、条例・規則のほか「規程及内規等」だとされていた(大塚辰治『市町村例規提要』1933(昭8)年、良書普及会、1頁)。
今の自治体の例規集にも、条例・規則のほか、行政内規である「規程」が多く収められ、告示「要綱」もむしろ載せられてよい。しかしながら、自治立法のなかで、地域統治主体である自治体の正式自治法規である「条例・規則」が基本であることは明らかで、条例規則を合せた言葉として「例規」と言うのが、これからの自治体法用語にふさわしいのではないだろうか。
それはちょうど、国の法律と政省令を合わせて「法令」と呼ぶのと、好一対になる。自治法で「法令に違反しない限りにおいて」条例をつくれるとしているのがそれだ(14条1項。また2条16項も)。それに対し、条例を含めたすべての法規の意味で「法令」と書かれる例もあるが(232条の4・2項など)、「法令」に自治体の議会立法である条例を含める書き方はいわば戦前的であって、現に「法令又は条例」という書き方が増えつつある(「法規」というのが総称語のはずである。行訴法5条参照。)
そして、国の法規と自治体の自治法規に対し、議会立法と行政立法(行政機関が定めた法規)という横断的区別があり(国の政・省令と自治体の「規則」が行政立法の呼び名)、さらにそれらに、行政内規である「規程」(訓令)と「要綱」(告示にもなる)および国各省の「通達」が、今日では法規に近い働きのものとして並んでいる。

これによると、「法令」に対する言葉として「例規」があり、両者を合わせて「法規」と呼ぶとしているが、法令との関係を含めて形式的に整理しようとした場合には、非常にすっきりして分かりやすい考え方のように感じた。
ただし、この考え方で一貫することも難しい。例えば木佐茂男『自治立法の理論と手法』(P319)では、例規を「自治体が定める法規」としており、この考え方によると、法規としての性格を有する告示も入ってくることになる。実際に私が「例規」という言葉を使う場合には、このような意味で使っていることもある。なかなか難しいものである。