規則委任の規定はすべて悪なのか

最近*1、北村喜宣先生の自治力シリーズをまとめて読ませていただいた*2。言うまでもないことであるが、このシリーズは、読みやすく、非常に有益なものであると思う。そして、『自治力の冒険』(P70〜)の「直罰それともワン・クッション?―義務づけ規定2様」など、法制執務的に非常に参考になる記載も存する。
ただ、今回取り上げるのは、やや揚げ足をとるような形になってしまうが、同書(P47)で次のように記載されている部分についてである。

たとえば、「規則に定めるところにより」を多用するような条例は、透明性や民主性の観点から問題がある。また、議会軽視でもある。

本来条例で定めなければいけない事項を安易に規則に委任することはもちろん適当ではないのだが、上記の記載は、そのことを示す例としては適切ではないように感じる。
通常、「規則で定めるところにより」という形で規則委任する事項は、手続の細目的な事項であることがほとんどであり(2007年2月16日付け記事「届出に関する規定の書き方」参照)、その事項自体、あえてこのような形で委任する規定がなくても規則で定めることができる事項なのである(2006年10月7日付け記事「条例で規則へ委任することを規定することについて」参照)。もちろん、上記の記載の意図は、そのようなところにあるのではないのだろうが。
 なお、余談になるが、上記の「規則に定めるところにより」は、「規則で定めるところにより」とすべきだろう。「で」とすべきか、「に」とすべきかについては迷うこともあるが、例えば「鉛筆で書く」という場合の意味と「鉛筆に書く」という場合の意味を考えるよいのではないかと思う。
つまり、上記のような規定は、規則という手段で委任するという意図であるわけだから「規則で定める」となる。
他方、「規則に定める」とするのは、それに続けて規則に定められている事項を記載することにより、それを引用する場合ということになろう。例えば、「第○条で規定する……」とはせずに、「第○条に規定する……」とするわけである。

*1:というより、今頃になってようやくという感じではあるが。

*2:残念ながら『自治力の発想』は入手不可ということであった。