文理と違った解釈がなされている規定の取扱いに関するメモ

1 規定

行政事件訴訟法
(無効等確認の訴えの原告適格
第36条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。

2 解釈上の疑義
「当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないもの」は、「当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者」にもかかっていると解するべきか。(以下宇賀克也『改正行政事件訴訟法』(P142〜)等参照)
(1) 一元説:かかっているものと解する(文理)。
(2) ニ元説:かかっていないものと解する(立法者意思、判例)。
3 大規模改正時であっても改正を行わないことについて

法36条の点の打ち場所については、今般の行政事件訴訟の改正作業(2004年の改正作業)*1では論議の対象とならなかった。36条の解釈運用に一定の安定性が得られ、点の打ちかえは、新たな交通混乱をもたらす可能性もあることがおそれられた故である。既成事実が意味をもつ法技術は、単純なリコール制度になじまない一例を提供している。(塩野宏行政法2(第4版)』(P203))

4 自治体における取扱い
上記3は、法の安定性を考慮したものだが、もちろん、すべての場合に同様に扱わなければならないというものではないだろう。
そして、自治体の例規の場合は、判例等の解釈が重要な意味を持つようなことは少ないだろうから、文理と解釈に齟齬があるような場合に解釈に即した文理となるよう改正することは一般的には容認してよいと思う。
ただし、その改正を行うことによって従来の取扱いも変更されるのだととられてしまうこともあるので、このような改正は、当然慎重であるべきなのであろう。

*1:管理者注記