地球温暖化対策における自治体の役割

地球温暖化対策に関し、自治体においても条例を制定する例があるが、かねてから私は、地球温暖化対策は地域における事務(地方自治法第2条第2項参照)とはいえず、自治体が条例を定めて取り組むような事項ではないのではないかと感じていた。ただ、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下「法」という。)は、地球温暖化対策に関し、自治体にも一定の責務を課している。そこで、自治体は、これに関しどのような取組みを行うべきなのか考えてみることにする*1
自治体に課しているその責務に関する法の規定は、次のとおりである。

地方公共団体の責務)
第4条  地方公共団体は、その区域の自然的社会的条件に応じた温室効果ガスの排出の抑制等のための施策を推進するものとする。
2  地方公共団体は、自らの事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置を講ずるとともに、その区域の事業者又は住民が温室効果ガスの排出の抑制等に関して行う活動の促進を図るため、前項に規定する施策に関する情報の提供その他の措置を講ずるように努めるものとする。

法第4条第1項は、「地方公共団体は、……温室効果ガスのための排出の抑制等のための施策を推進するものとする」としている。そして、同条第2項は、(1)自治体の事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置を講ずること、(2)事業者又は住民に対し、情報の提供等の措置を講ずることという2点について努力義務を課している。
そうすると、自治体における責務の内容は、自らの事務事業に関するもののほか、事業者等に対するものとしては啓発を行うことが中心となる。そして、具体的に自治体に期待されている取組みとして法に定められているものは、地方公共団体実行計画の策定(法第20条の3)は自治体の事務及び事業に関するものであるし、地球温暖化対策を推進するため自治体が委嘱したり組織する、地球温暖化防止活動推進員(法第23条)、都道府県地球温暖化防止活動推進センター(法第24条)、それから地球温暖化対策地域協議会(法第26条)は、住民等に対する地球温暖化対策等の啓発等を行うためのものである。
さらに、法第4条第1項にいう「その区域の自然的社会的条件に応じた温室効果ガスの排出の抑制等のための施策」とは何かについてだが、この点について、環境省地球環境局地球温暖化対策課「地球温暖化の現状と京都議定書」『自治体法務研究No.11』では、次のように記載されている。

都道府県は、地域のより広域的な公的セクターとして、主として、交通流対策やその区域の業務ビルや事業者の取組みの促進といった、広域的で規模の大きな地域の地球温暖化対策を進めるとともに、都道府県地球温暖化防止活動推進センター、地球温暖化対策地域協議会及び地球温暖化防止活動推進員と協力・協働しつつ、実行計画の策定を含め市町村の取組みの支援を行うことが期待される。
一方、市町村は、その区域の事業者や住民との地域における最も身近な公的セクターとして、地球温暖化対策地域協議会と協力・協働し、地域の自然的社会的条件を分析し、主として、地域住民への教育・普及啓発、民間団体の活動の支援、地域資源を活かした新エネルギー等の導入のための調査・導入事業といった、より地域に密着した、地域の特性に応じて最も効果的な施策を、国や都道府県、地域の事業者等と連携して進めることが期待される。

少なくとも、法は自治体が事業者等に規制を行うべきことは想定していないようである。自治体においては、一時の雰囲気に流されて必要以上の規制を行うべきではないだろうし、もし行おうとするのであれば、その必要性を十分に説明することが求められるのではないだろうか。

*1:参考文献:『自治体法務研究No.11』の特集「地球温暖化対策と自治体」