増補方式……的な改正

例規の一部改正の方式である増補方式とは、「ある既存の法令の内容の一部を追加、修正、削除する法令は、それが成立したあとも改正対象となった既存の法令の中にはとけこまずに、そのままの形のものとしてあとまで存続し、既存の法令に対する増補の形で、あとからあとから積み重ねられてゆく方式」のことをいい、我が国の法令では、明治憲法時代の皇室典範に例があるくらいとのことである(林修三『法令作成の常識』P76参照)。
この増補方式による改正が具体的にどのようなものなのかについては確認していないが、次に掲げる例がそれに近いのではないかと思う。

檢察審査会法施行令の一部を改正する政令(昭和24年政令第30号)
   (略) 
第1條を第2條とし、第2條を第3條とし、第3條を第29條とする。 
第1條として次の1條を加える。
第1條 (略)
第3條の次に次の25條を加える。
第4條〜第28條 (略)
附 則
1 この政令は、公布の日から施行する。但し、この政令施行前にした手続の効力を妨げない。
2 法附則第2項の規定により、昭和24年1月31日に選定される檢察審査員及び補充員の任期の別を定めるには、第10條第1項の規定によりくじ箱から番号票が取り出された順序に従い、先順位者各6人の任期を3箇月とし、その他の各5人の任期を6箇月とする。
別記第1様式   (略)
別記第2様式   (略)

この一部改正政令が増補方式に近いのではないかと感じる部分は、様式を追加している部分である。
検察審査会法施行令の様式は、2008年7月18日付け記事「様式の追加」で取り上げたことがあるが、この一部改正政令で追加されたものである。つまり、上記の別記第1様式と別記第2様式がそのまま検察審査会法施行令の様式となっているのであるが、その追加の方法が、本則で追加する旨の改正規定を置くのではなく、附則の最後に何の改正規定もなく記載されていることが、私には増補方式のような感じがするのである。
もちろんこのような様式の追加は、現在では行われていない。そして、そのほか本則における条の追加も現在では行わないやり方となっている。このように、古い法令においては、現在では用いられていない改正方法を用いている例が結構ある。こうした例も追々取り上げてみることにしたい。