許可等の基準の書き換え(上)

ある規定に定められた許可等の基準について、特定の場合に別の規定で書き換えることがある。例えば、次のような規定がある*1

○○市残土の埋立てによる地下水の水質の汚濁の防止に関する条例
(残土埋立事業の許可)
第9条 残土埋立事業を行おうとする者は、残土埋立事業区域ごとに、あらかじめ市長の許可を受けなければならない。ただし、当該残土埋立事業が次に掲げる事業である場合にあっては、この限りでない。
(各号略)
(許可の基準)
第13条 市長は、残土埋立事業許可の申請が第10条第1項の規定によるものである場合にあっては、次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、残土埋立事業許可をしてはならない。
(各号略)
2 市長は、残土埋立事業許可の申請が第10条第2項の規定によるものである場合にあっては、当該申請が前項第1号、第2号及び第9号並びに次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、残土埋立事業許可をしてはならない。
(各号略)
(地下水保全協定)
第29条 相当規模の一団の土地に係る土地所有者等(その権利を登記により第三者に対抗できる者に限る。以下この章において同じ。)は、地下水の水質の保全を図るため、その全員の合意により、地下水の水質の保全に関する協定(以下「地下水保全協定」という。)を締結し、市長の認可を受けることができる。
2 地下水保全協定においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
(1)・(2) (略)
(3) 地下水の水質を保全するために必要な事項
(地下水保全協定の認可)
第30条 市長は、前条第1項の規定による地下水保全協定の認可の申請が次の各号に該当するときは、当該地下水保全協定を認可しなければならない。
(各号略)
2 市長は、前項の規定による認可をしたときは、その旨を公告し、かつ、当該地下水保全協定の写しを市役所に備えて一般の閲覧に供するとともに、その対象となった土地の区域内に明示しなければならない。
(残土埋立事業許可の基準の特例)
32条 残土埋立事業区域内の土地を対象として第30条第2項の規定による認可の公告があった地下水保全協定が締結されている場合において、第13条第1項及び第2項の規定の適用については、これらの規定中「次に掲げる基準」とあるのは「次に掲げる基準(当該残土埋立事業区域内の土地を対象として締結されている地下水保全協定が定める地下水の水質を保全するために必要な事項で残土の埋立てに係るもののうち、市長が第30条第2項の規定により当該地下水保全協定を認可した旨を公告する際に同時に指定したものを含む。)」とする。

この条例では、第32条で第13条第1項及び第2項の読替え適用を行うことにより、土地の所有者等は、地下水保全協定を締結することができ、それが市長に認可された場合には、その協定で定められた地下水の水質を保全するために必要な事項のうち一定のものは、市長が行う残土埋立事業の許可の基準とされている。
この条例の書き方と結果として同じような書き方をしている法令の規定の例として、次のようなものがある。

特定都市河川浸水被害対策法(平成15年法律第77号)
(許可の基準)
第11条 都道府県知事は、第9条の許可の申請があったときは、その対策工事の計画が、当該行為区域における雨水浸透阻害行為による流出雨水量の増加を抑制するために必要な措置を政令で定める技術的基準(次条の条例が定められているときは、当該条例で定める技術的基準を含む。第17条第2項及び第3項、第18条第1項並びに第20条第1項第4号において同じ。)に従い講じたものであり、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、その許可をしなければならない。

都市再開発法(昭和44年法律第38号)第7条の8、都市計画法(昭和43年法律第100号)第33条第1項等も同様な書き方をしているので、これが一般的な書き方といってよいのかもしれない。
しかし、私は、少し粗い書き方であるように感じてしまう。では、他に違った書き方がないのか、次回に取り上げてみたい。

*1:山本博史『行政手法ガイドブック』で取り上げられているものである。