非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて・追記(下)

今回は、2009年5月15日付け記事「非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて・追記(中)」の末尾に記載したとおり、私が大津地裁判決に疑問を持っている点について記載する。それは、次のとおりである。
1 立法趣旨を強調し過ぎている点
津地裁判決は、地方自治法第203条の2第2項の文理からするととても違法とはいえないことを違法とする解釈を、その立法趣旨から導いている。
法律を受けて制定する例規政令や省令であれば、その立法趣旨を十分踏まえる必要はあるのだろう。しかし、果たして、国の機関ではない自治体が、法律に明記されていない立法趣旨を十分に意識して条例を制定しなければいけないものなのであろうか。
さらに、この規定が追加された当時であればいざ知らず、分権以降の国と自治体との関係等を踏まえると、大津地裁判決は、あまりにも国の立法機関なり行政機関の考え方に偏った解釈であるように感じる。
2 常勤・非常勤の区別が曖昧であること
確かに、地方自治法は、常勤か非常勤かということをメルクマールにして、給与に関する規定を設けている。しかし、実際にはその区別が甚だ曖昧なものになっている。
例えば、国の場合でも、国家公安委員会の委員は常勤扱いとされ、その勤務は週1回の公安委員会が主なもののようである。そうすると、大津地裁判決で問題とされている行政委員の勤務形態と比較した場合、私には五十歩百歩ではないかと感じる。
3 自治体の行政委員の報酬は、それ程高額ではないこと
自治体の非常勤の行政委員の報酬は、月額でせいぜい20万円程度であろう。これに対し、上記の国家公安委員会の報酬は、月額121万1,000円(特別職の職員の給与に関する法律別表第1)となっている。
もちろん、安いからいいだろうということにはならないのだが、20万円程度では生活給としては少額であろう。つまり、自治体における非常勤の行政委員の報酬は、月額報酬は生活給としての意味合いがある云々ということをあまり意識していないことになる。
そして、非常勤の行政委員の報酬を月額から日額に改めようとする場合、既定の額によるのでなく、その委員の報酬としてふさわしい額を新たに定めるということも考えられるので、結果として委員等に支給する額はあまり変わらないということも考えられる。そうすると、例えば一定の継続的な業務量があることに着目して月額制としたとしても、違法とまではいえないのではないかと感じる。
4 まとめ
以上の理由から、私は、大津地裁判決が非常勤の行政委員の報酬が月額制であることを違法としたのは、行き過ぎではなかったかと感じるのである。
さらに、行政委員の報酬を決める際には、学識経験者等による審議会の答申を経るなど、それなりの手続を踏み、それなりの根拠があるだろうから、裁判所においてもその判断は尊重すべきではないかと感じるのである。
いずれにしろ、今後どのように推移していくか注目したい。