例規の過誤

今回は、tihoujitiさん(http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20090611)が掲載されていた次の新聞記事が気になったので、それを取り上げてみます。

鹿笛:先日開かれた大和高田市の記者会見で…/奈良 
先日開かれた大和高田市の記者会見で、一瞬目を疑った。市文化財保護条例の一部改正案で、第2条にある「民族文化財」を「民俗文化財」に改める、と書かれていたためだ。基本中の基本ではないか? 
条例は93年に制定された。記者会見後、市教委に「なぜ、今まで気づかなかったのか」と尋ねた。市教委幹部は「いつごろ間違ったのか、詳細を調べないと分からない。恥ずかしい話だ」と頭を抱えていた。 
05年の条例の一部改正で「民族文化財」になったことが分かった。今回、市企画法制係が間違いに気づき直すことに。私も変換ミスなどで間違うことがある。チェックの大切さを痛感した。(毎日新聞2009年6月11日地方版

もちろん、間違いを肯定するわけではないが、公務員に関するマスコミの報道については、揚げ足取りとしか思えないようなものが多く、上記の記事も、私にはそのように思える。
しかし、他人のミスをあげつらっている上記の記事にしてもおかしなところはある。それは、「市教委に『なぜ、今まで気づかなかったのか』と尋ねた」という文章についてである。市教委幹部の発言からすると、ここは「いつごろ、このような間違いを犯したのか」といった質問であるべきである。「なぜ、今まで気づかなかったのか」ということについては、その後何も触れられておらず、結局、全体として論理的なものとなっていない。私は、字句のケアレスミスよりも、そのような文章全体の論理性の方が気になってしまう。
そのような揚げ足取りはさておき、では、上記のような例規の過誤を見つけた場合にどのように対処するかである。
通常は、他に改正があった場合に、併せて改正するということになろう。そして、その際に、過去の間違いは間違いとして、正々堂々と認めてしまうということが考えられる。上記の事例では、改め文に「第2条中『民族文化財』を『民俗文化財』に改める」とあったのであろうから、正々堂々と認めるつもりだったのであろう。しかし、そのような対処をしようとするのであれば、上記の記者会見のときに、いつ間違えたのかくらいは確認しておくべきだろう。
では、間違いを何とかごまかす方法はないだろうか。私が思い浮かぶのは、第2条に他の改正事項がないとしても、同条を全部改正することである。しかし、これは、悪魔のささやきかもしれない。気が付かれたときの対応が大変になりそうであるから……。