「Aその他のBであってC」の略称(上)

平成20年12月19日に公布された「高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律(平成20年法律第93号)」の第3条第4項は、「感染症その他の疾患であって、その適切な医療の確保のために海外における症例の収集その他国際的な調査及び研究を特に必要とするもの」の略称を「感染症その他の疾患」としているが、これは、原案が「感染症等」としていた略称を国会において修正したものである。
なぜこのような修正がなされたのかはよく分からないが、端的にいうと「Aその他のBであってC」という文言の略称として、「A等」とされていたものを「Aその他のB」と修正したことになるが、実際にこのような場合には、どのような略称が置かれることが多いのだろうか。
まず、一般的な略称の置き方を確認することにする。大島稔彦『法令起案マニュアル』(P201)には、次のように記載されている。

第1は、「社会保険診療報酬支払基金」を「支払基金」というように、語句の一部を用いる略称である。
第2は、「通則法第29条第2項第1号に規定する中期目標の期間」を「中期目標の期間」というように、語句の限定を外す略称である。
第3は、「事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支計算書」を「事業報告書等」というように、代表的な語句1つを挙げ、他は「等」で括る略称である。
第4は、「商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業」を「営利企業」というように、いくつかの語句を包括するような語句を用いる略称である。
第5は、「刑事訴訟法の定める通常の規定による審判」を「正式裁判」というように、内容を要約した語句を用いる略称である。
第6は、「ヒト胚分割胚、ヒト胚核移植胚、人クローン胚、ヒト集合胚、ヒト動物交雑胚、ヒト性融合胚、ヒト性集合胚、動物性融合胚又は動物性集合胚」を「特定胚」というように、いくつかの語句を「特定」で括る略称である。

これに上記の事例を当てはめてみると、原案の略称は、この第3に当たることになるであろう。これに対し、修正後のものは、あえて当てはめようとすると第4に近いように感じるが、ぴったりくるものがないところをみると、あまり一般的とはいえないのかもしれない。
では、実際に「Aその他のBであってC」という文言の略称として、どのような文言が置かれているのか、次回以降で確認していくことにする。