自治体における断続的労働に関する例規の規定(上)

洋々亭さんのサイト経由で知ったのだが、厚生労働省出身の方が管理されている「EU労働法政策雑記帳」というブログで、ある自治体立の病院に対する断続的労働の運用等について批判的に取り上げられていた。
ここで取り上げたいのは、その自治体の断続的労働に関する例規の規定ぶりであるのだが、それに先立って、今回は自治体における断続的労働及び労働基準監督機関について簡単に触れることにする。
断続的労働については、次のとおり労働基準法第41条の規定により、労働基準監督機関の許可が必要とされている。

労働基準法
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第41条 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
(1)・(2) (略)
(3) 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

ところで、自治体の職員に対する労働基準監督機関については、地方公務員法第58条第5項が次のように定めている。

地方公務員法
(他の法律の適用除外)
第58条 (略)
2〜4 (略)
5 労働基準法労働安全衛生法、船員法及び船員災害防止活動の促進に関する法律の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定中第3項の規定により職員に関して適用されるものを適用する場合における職員の勤務条件に関する労働基準監督機関の職権は、地方公共団体の行う労働基準法別表第1第1号から第10号まで及び第13号から第15号までに掲げる事業に従事する職員の場合を除き、人事委員会又はその委任を受けた人事委員会の委員(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の長)が行うものとする。
(参考)   
労働基準法
別表第1(第33条、第40条、第41条、第56条、第61条関係)
(1) 物の製造、改造、加工、修理、洗浄、選別、包装、装飾、仕上げ、販売のためにする仕立て、破壊若しくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは伝導の事業及び水道の事業を含む。)
(2) 鉱業、石切り業その他土石又は鉱物採取の事業
(3) 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
(4) 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
(5) ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業
(6) 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
(7) 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
(8) 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
(9) 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
(10) 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
(11) 郵便、信書便又は電気通信の事業
(12) 教育、研究又は調査の事業
(13) 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
(14) 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
(15) 焼却、清掃又はと畜場の事業

地方公務員法第58条第5項の規定によると、労働基準法別表第1第1号から第10号まで及び第13号から第15号までに掲げる事業に従事する職員の労働基準監督機関は労働基準監督署であり、それ以外は人事委員会(人事委員会を置かない自治体は、自治体の長となる。以下特に触れない限り、人事委員会とした場合には、人事委員会を置かない場合の自治体の長も含むこととする。)ということになる*1
そして、自治体の事業所について労働基準法別表第1のいずれに該当するかどうかをどのように決めるのかについては、次の行政実例がある。

人事委員会は、労働基準監督機関としての職権を行なうため、当該地方公共団体の事業または事務所が労働基準法第8条第11号、第12号、第16号および第17号に該当するかどうかを決定する権限を有する。 
なお、人事委員会がこの号別を決定する際は、地方公務員法第8条第6項に基づく協定等により、労働基準局……と協議することが適当である。(昭和38年6月3日自治丁公発第166号)

上記の行政実例は労働基準法別表第1に相当する規定が同法第8条に置かれていた当時のものであるが*2、これは同法別表第1の何号に当たるか当たらないかを決定する権限は、都道府県労働局と人事委員会に分属しているのであるが、実際にはその両者で協議して決するということである。
そして、事業を開始する場合には、使用者は労働基準法第104条の2第1項及び労働基準法施行規則第57条第1項第1号の規定により、労働基準監督機関に報告することになっているので、上記の協議で決したところにしたがって、自治体の長等は、所管の労働基準監督機関にこの報告を行うということになろう。

*1:人事委員会が労働基準監督機関となる事業所には、労働基準法別表第1に分類されていないものがあることに留意する必要がある。例えば、同法第33条第3項(公務のために臨時の必要がある場合においては、第1項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第1に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。)参照。

*2:平成10年法律第112号により現行のような規定とされた。