飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について〜最高裁判決が出された事例(中)

2 懲戒処分の指針における他の交通法規違反に対する処分例との比較
判決では、処分者の懲戒処分の指針における他の交通法規違反に対する処分例と比較して、次のように述べている。

仮に、加西市職員が「無免許運転又は著しい速度違反(50km以上)等悪質な交通法規違反をした」という場合、減給又は戒告という懲戒処分を受けるにとどまるはずであるが(本件指針)、そうすると、本件酒気帯び運転によって被控訴人が免職となるのは、いささか、非違行為と懲戒処分との均衡を欠くきらいがあるといわざるをえない。

これは第一審においても同様の判断をしているのであるが、2009年3月13日付け記事「飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について(3)」で、私は次のように記載している。

懲戒処分の指針については、その当否は判断しないといいながら、その指針で定めている悪質な交通法規違反の場合と比較しているなど、判決の内容に矛盾を感じる部分もある。

この第一審判決に感じた矛盾については、高裁判決では、懲戒処分の指針について一応の合理性があるという判断をしているため解消したことから、改めて高裁判決のこの部分を見ると、納得できる面があるのである。
私が、飲酒運転をすれば懲戒免職としても違法ではないと考える理由は、2009年3月28日付け記事「飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について(5)」で記載した次の理由によるものである。

私は、法令遵守義務を負う公務員が、故意に法律違反の行為を行い、それが他者の命を奪う可能性があるのであれば、そもそも弁解の余地はないのではないかと思う。飲酒運転の危険性が問題となっている今日においてその行為は、例えば公衆の集まる場所で刃物を振り回す行為とどれほど違うというのであろうか。

そうすると、上記の悪質な交通違反、特に無免許運転についても相当の危険性があることを考えると、飲酒運転をすれば懲戒免職とすることは均衡を欠くという理屈は、一応成り立つのではないかと感じるのである。
3 その他
高裁判決では、2で触れた懲戒処分の指針に対する判断もそうなのであるが、以前私が疑問に感じた点について取り上げている部分もある。
例えば、私は、2009年3月28日付け記事「飲酒運転に係る懲戒免職処分を取り消す判例について(5)」で、次のように記載した。

この……判決で、私が被処分者に同情する部分をあえて探すと、飲酒後直ちに車を運転するのでなく、……30〜40分程度雑談した後に運転したことであるが、……判決ではあまり考慮していないというのも不思議である。

この点について高裁判決では、被処分者に有利な事情として取り上げている。