いわゆる「渡り政令」について〜その後(中)

今回は、平成21年1月13日の衆議院予算委員会における馬淵議員の質疑等について取り上げる。
ここで触れられている国会同意人事に関する歴史的経緯については興味深いので、長めに引用することにする。

<第171回国会衆議院予算委員会(平成21年1月13日)>
○馬淵委員 民主党の馬淵でございます。
 締めくくり総括質疑をさせていただきます。
 この補正予算、二次補正予算の審議が本日で終局となること、これは大変遺憾でありますが、しかし、この1・5日の基本的質疑の中でも大きな問題が明らかとなりました。私は、その中で、天下り推進政令について、仙谷委員並びに枝野委員両名が政府にただしましたこの問題について質疑をさせていただきます。
 この天下り推進政令についてですが、経緯を簡単に申し上げますが、一昨年の国家公務員法の改正におきまして、官民人材交流センターによるいわゆる一元管理の名のもとに、府省あっせんを行わなくして、その官民人材交流センターがあっせんを行う、天下りはある意味公然と行われることになったわけであります。
 そして、官民人材交流センター設置と同時に、再就職等監視委員会、これも設置されることになりました。天下りの際の監視を行う機関ということであります。しかし、このセンターが稼働するまでの間、最長三年を限度として、この間は再就職等監視委員会が承認をすれば府省は今までどおりあっせんができる、こういう仕組みとなりました。
 しかし、この再就職等監視委員会は国会の同意人事であり、これが不同意となったために、再就職等監視委員は不在となった。そのため、府省による再就職あっせんが承認できなくなるということから、政府は、再就職等監視委員会内閣総理大臣と読みかえる政令閣議決定したという問題意識を仙谷委員の方で指摘させていただきました。
 そこで、まず、この再就職等監視委員会はどのような機関かということの立法趣旨について確認をさせていただきます。
 この再就職等監視委員会、これは平成19年の国公法の改正のときの議論の中で、当時の渡辺行革担当大臣が明確に示されております。内閣府設置法に基づく審議会として内閣府に設置されますと。各府省等から独立した監視機関であり、その職務遂行上、高い公正中立性が求められる、職権行使の独立性が認められなければならないとして、合議体の委員会がみずからの責任において再就職に関する規制の実効性を確保するためにこういう形でつくるんだということを渡辺大臣は委員会の中でも明言されております。
 官房長官、端的にお答えください。この再就職等監視委員会の機関の立法趣旨、今私が渡辺大臣の答弁を引き合いに出させていただきましたが、これでよろしゅうございますか。
○河村国務大臣 お答え申し上げます。
 御指摘の再就職等監視委員会の役回り等々、今御指摘のあったとおり、その立法趣旨に基づいて設置されておる、こういうことであります。
○馬淵委員 この再就職等監視委員会今渡辺大臣の答弁を引き合いに出したような立法趣旨でつくられたわけでありますが、この再就職等監視委員会、同意人事でございます。
 国会の同意人事ということなんですが、まず、この国会同意人事がどういうものか、よく御存じの方もいらっしゃるかもしれません。私は余りよくこれは承知しておりませんでした。今回、衆議院の事務局においでをいただいて、これについていろいろとお話を聞かせていただいたんですが、この委員会にもお越しいただいております。
 この国会同意という人事制度の意義、これを確認したいんですが、この起源と目的について、衆議院事務局、お願いしたいと思います。
○白井参事 お答えいたします。
 昭和22年の第92回帝国議会における会計検査院法改正によって、検査官について、その職責上、中立性、公平性、内閣からの独立性が必要であることにかんがみ、国会の両議院に同意を求めることとしたのが起源であると承知いたしております。
○馬淵委員 ありがとうございました。
 随分古い話であります。昭和22年、敗戦後の92回の帝国議会で、いわゆる内閣から十分独立させるために、職責上、中立性、公正性、これを担保するために両院の同意というものを義務づけた、これが国会同意人事の始まりであります。その後、こうした同意人事によってさまざまな機関がつくられていくわけであります。
 そこで、平成10年6月の9日であります。当時の国会で、衆議院議院運営委員会理事会において与野党合意の上でなされた「国会同意人事の取扱い等について」という申し合わせがございます。この中で同意人事について記しておりますが、この同意人事、どのような制度として規定をされていますでしょうか。これも事務局、答弁をお願いします。
○白井参事 第142回国会、平成10年6月9日の衆議院議院運営委員会理事会申し合わせ「国会同意人事の取扱い等について」において、「国会同意人事制度は、内閣に対し独立の地位を有する会計検査院や一定の中立性が求められる合議制行政機関、政策審議機関等の構成員の任命につき、両議院の同意を必要とする制度である」と記されております。
○馬淵委員 ありがとうございます。
 これは、衆議院議院運営委員会の理事会の中で申し合わせ事項として確認をしたわけです。すなわち、与野党自民党も含めて、この同意人事の制度というものはどういうものかということを確認した申し合わせでございます。つまり、公務員の任命に当たっては、中立性、公平性、内閣からの独立性を担保するために国会に同意を求められているということについて、制度としてこれは決定をしたわけであります。
 この中で重要な表現としてありますのは、会計検査院、これは独立性を保つのはよくわかりますが、一方で、合議制の行政機関、これらも独立性を担保し、かつ中立性、公正性を担保しなければならないとして、この同意人事に付するという制度がつくられたわけであります。
 この同意人事、今現在は再就職等監視委員会も同意人事の合議制の行政機関でありますが、それ以外にももちろんのこと、公正取引委員会あるいは原子力委員会等々、ざっと40余りの同意人事の機関がございます。この40余りの機関、この同意人事がこのような形でなぜ議運で取り決められたのか、あるいは、なぜもともと発端としてこのような同意人事という仕組みができたか。これは、もとをただせば、憲法の第15条にさかのぼります。憲法第15条で、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」このように定められている。
 すなわち、憲法上、国民によって直接に選定される我々国会議員である、あるいは地方議員や地方の首長たち、こうした方々は、直接に選定されるわけでありますから国民が固有の権利を行使していることになりますが、そうでない公務員、国家公務員や地方公務員等々については、これは国会を通して、法律を審議して、法律として定められ、それがまさに国民の意思、国民の固有の権利として行使されるという仕組みになっているからこそ、この同意人事というのがつくられているということになります。
 そこで、このように、公務員の任免については国民の意思とみなされる国会の法律にゆだねられているから、今日皆さん方は仕事をされているわけであります。
 しかし、この任命権というのは、これはいかんせん、行政府に集中する傾向があります。したがいまして、こうした国民の権利というものを、実際に公務員の選定権という実質を失わせないために、中立性の求められる機関については国会が同意を与えるという仕組みになっている。これが、昭和22年以来、同意人事という仕組みをつくり、今日まで40余りの機関を同意人事でつくってきた歴史的経緯なんです。
 麻生総理、総理にお尋ねしたいんですが、このような国会の同意人事、国民の代表者から成る国会がこれを決定していくわけです。なくてはならない重要な制度であります。この同意人事に対する国会の同意の重みについて、麻生総理はどのような認識をお持ちですか。
麻生内閣総理大臣 重いものだと、当然のこと考えております。衆参両院においてこの同意人事というものがいろいろな形でなされておりますが、過日のNHKの話、日銀の話を含めて見まして、同意人事というのは極めて重たいものだと理解をしております。
○馬淵委員 全くそのとおりであると私も思っております。これは極めて重い国会の意思である、すなわち国民の意思である、重いものである、このように理解をしております。
 そして、問題の再就職等監視委員会も、渡辺大臣の答弁を引き合いに出したように、公正中立性、そして独立性を理由に国会の同意人事案件とすることが、これは国家公務員法で定められています。
 さて、一定の中立性が求められる合議制行政機関、これに再就職等監視委員会は該当いたします。そして、国会はどのような意思を示したのか。これは、先ほど来いろいろ申し上げているように、国公法で義務づけられたこの同意人事については、昨年の6月6日、そして11月の21日、この2度にわたり不同意となりました。国権の最高機関である国会の意思が2度にわたって不同意となった。
 このことに触れますと、すぐに政府の皆さん方あるいは自民党、与党席の方々も、いや、民主党が反対した、民主党が反対したとおっしゃるのですが、そうではありません。これは民主党ではなく国会の意思なんです。国会の意思として2度にわたり不同意を示したわけであります。そして、この国会の意思を、実は、政府はこの政令によって覆そうとしているんですよ。行政、まさに役人がこの国会の意思を変えようとしていることになるんです。
 このことを、意思を覆したこと、行政の手によって国会、国民の意思、これを覆したことについて、総理はどのようにお考えですか。
麻生内閣総理大臣 お言葉を返すようで恐縮ですが、同意人事に関しましては、これは、法が定めた仕組みに反対という理由で、候補者のいかんにかかわらず、2度にわたって同意がされないという事態になりましたのは、馬淵先生よく御記憶のとおりだと存じます。国会の同意人事ですから。したがいまして、こういうような状況をこの法律は全く想定してできていなかったんだ、私はそう理解をしております。
 したがいまして、今言われました、御指摘の政令の条項というものは、こういった異例な事態を受けまして、その上で、委員長が任命されるまでの間、これは一日も早く任命していただくことを期待しておるんですが、経過措置として、再就職などの規制について監視などを行う、その実効性を確保するために設けざるを得なかったということだと理解をしております。
 したがいまして、法律の施行に関して必要な経過措置というものは、これは政令で定めるということに書いてありますので、そういった意味では、法律改正までは要しないものと考えたというのがその背景だと理解をいたしております。
○馬淵委員 国会の意思、国民の意思なんです。そして、国民の意思として不同意になったんです。そして、今、総理は想定されないとおっしゃいましたが、同意か不同意かというのは国会の中で決定するわけですから、法が予定している話とは別の話なんです。
 私がお聞きしているのは、同意人事というのは国会の意思である、それを政令、すなわち行政、役人側の意思によって変えることについて、先ほど重みがあるとおっしゃった。重みがあるにもかかわらず、これを変えることが果たしてできるのか、私はそのことをお尋ねしているんですよ。総理、そのことに対して端的にお答えください。
○河村国務大臣 馬淵先生、国会の意思だ、こうおっしゃる。それは、同意人事はまさにそうであろうと思います。
 しかし、このお出しした法律そのものは、これはもう成立をして、この法律を誠実に実施する責任が我々政権にあるわけであります。
 そういう意味において、そのことが全く想定されなかったというのはそこにまさにあるわけでありまして、そのことが同意されない、法が定めた仕組みに反対であるからという理由でそういうことになるということは、これまでもなかったことでありますから、想定されなかったことだと。こういうことで説明を申し上げておるわけで、そのための暫定的な措置をとらざるを得ない。
 かくなる上は、一日も早く、ずっと私も言い続けてきたんでありますが、同意人事に御理解をいただきたいと申し上げてきておるところであります。
○馬淵委員 今、官房長官、法律で決まったから、そしてそれを通そうとしている中で反対された、このようにおっしゃいます。これ、想定外だということを繰り返しおっしゃいますよね。これは実は仙谷委員の質問に対しても、想定外という言葉が内閣法制局長官から出てまいりました。1月8日の仙谷委員の質問に対して、宮崎法制局長官、これについては、「法の想定外の状況のもとでどのようにするべきかということについて」と。それで、今官房長官も、これは想定外だと。
 しかし、この国会の同意か不同意というのは、まさに国会の意思なんですよ。国会の意思であることは、これは想定の中に当然範疇として置かれなければおかしいんです。これを、国会の意思を無視して、想定外だと。この想定外だということについては、これは全く国会の意味がないですよ。これについてはどうお考えですか、官房長官
○河村国務大臣 私どもは、この法律に基づいて、実効あらしめるためにお出ししているわけでありますから、そのためにはどういう人物がいいのか、1回、2回、だめだとおっしゃるのなら次の人物に対してお願いをしたい、こう考えておるわけでございます。
 これまで、日銀の副総裁人事等においても同じようなことがあった。仕組みはできている、しかし、中身についてという、こういう想定のもとにこの同意人事は成り立っている、こういうことで来ておるわけです。
○馬淵委員 宮崎長官が法の想定外ということを繰り返しおっしゃり、今、官房長官も法の想定外だと繰り返しおっしゃるんですが、私が最初にこの問題について取り上げたのはいつか、昨年の3月の19日なんですよ。これは、仙谷委員が1月8日の質疑では、12月の末に、ひそかに12月につくったと、まあこっそりやったというニュアンスでお話もされていますが、いや、こっそりじゃないですよ。これはむしろ堂々と、行政側が国会同意という国会の意思をねじ曲げることをやっておられるんです。
 これについては、3月の19日に私は最初に質疑をいたしました。昨年です。もう1年ほど前ですよ、10カ月前です。この当時、渡辺行革担当大臣に、これが不同意となる可能性がある、この場合にはどうなるのかということをお尋ねしたところ、「各省あっせんはできなくなる」とおっしゃった。各省あっせんは一切できなくなる、このように答弁をされ、そしてその後も、私は5月の23日にも同様の質問をさせていただきました。
 総理の権限行使が果たして可能なのかということ。これは委任規定がございます、委任するという形で、総理に権限を行使させることが果たして可能なのか。これについては、内閣法制局から、権限の委任についてはということで、「権限の委任があったときは、その委任の範囲内において委任庁は当該権限を行使し得ず、受任機関が自己の名と責任においてこれを行使するものと解されております。」すなわち、委任する側がみずからは行使できないんだという答弁をされているんですね。
 こうした状況の中で、いや本当にそういう状況ならば、これは再就職等監視委員会、国会の意思として不同意も十分にあり得る、そのときにはこれはどういう対応をするんだろうか。5月の26日に私は質問主意書も出しました。6月3日に答弁をいただいている。その後、参議院では松井議員や、あるいは内閣委員会で私は11月、12月と続けて質問をしています。
 繰り返し繰り返しこのことについて確認をしながら、法の想定外だということで何らこのことに対する対応をせず、最終的には12月の末に、政令で委任規定があるからということで、経過措置期間の政令の委任規定に潜り込ませたというのが実態じゃないですか。
 官房長官、これは想定外じゃないですよ。昨年の3月から、この国公法が成立をしてから、この問題はどうなるんだろうかということで、参議院で逆転が成り、ねじれ国会となる中で、両院の同意が必要だという極めて独立性そして公正中立性が高い機関を設置するときにおいて、このような法の規定ぶりで大丈夫なんだろうかということで、私は、再三再四、主意書も含めて確認をしてきたんです。
 これに対しては、専ら行使を予定しているという答弁がありました。これは質問主意書に対する答弁です。再就職等監視委員会が専ら行使を予定していると。予定されない場合も十分あり得るではないかということを私は確認しているんですよ。想定外じゃないじゃないですか。いかがですか。
○河村国務大臣 政府としては、法律によってできた仕組みを誠実に実行する責務があるわけであります。その仕組みそのものに反対だから同意人事的なことは一切だめだということは想定していないということであります。これはまさに想定していないことであります。
 しかし、現実にこの法律は、3年後には官民人材センターに完全に移っていくという暫定期間的なものがある。その間についてはまさに特例的にせざるを得ない状況にあるんだということ、この御理解を求めておるわけでありまして、現実には、その間はできるだけ長くしないようにした方がいい、こういう意見があることは我々承知しておりますし、国民のいろいろ厳しい目もあることも十分承知しております。
 この3年間においてきちっとそういうことは整理をするんだ、しかし、その暫定的な措置としてこうせざるを得ない政府の役割がある、このことの御理解を求めておるわけであります。
○馬淵委員 いや、官房長官、何度も申し上げるように、国会の意思、これは私は歴史的経緯からひもときましたよ。国会の意思なんです。同意するかしないかというのは国会の意思なんです。この国会の意思の中で不同意となることを十分に想定され得るんですよ。法律をつくるときにそれが想定されなくても、法律をつくった後に想定される時間は十分にあったんです、昨年の3月から指摘していますから。その間もこれを全く取り合わずに、行政の言いなり、役人の言いなりになってきた。
 麻生総理は官僚を使いこなせと閣僚に言ったといいますが、使いこなすどころか操り人形になっているじゃないですか。麻生総理は、このような形で国会の権能を無視されていることを全く構わないとお考えなんですか。
 ここでさらに重い答弁がございました。宮崎法制局長官、長官は仙谷委員の質問に対して、外的障害、このように述べられました。これは何を意味するか。
 この外的障害とは、国会で同意人事が議決されなかったことについて、「外的な障害がございまして、」このようにおっしゃったんです。国会の議決がなされないことは外的な障害なんですか。同意人事というのは、これは国公法の中で制定されているんですよ。それを議決できなかったからといって、外的要因、外的障害、これはとんでもない話じゃないですか。
 これは政府見解はいかがですか。国会の議決が外的障害だということですか。政府見解を出してください。
○宮崎政府特別補佐人 外的障害という言葉が、もっと適切な言葉がなかったかなということは反省はいたしますけれども、国会同意そのものが制度の自己目的としてあるのではなくて、この問題につきましては、改正国家公務員法の106条の8で、この委員会の委員長及び委員の任命は内閣総理大臣の権限に属するわけであります。その任命権についての限定、制限として国会同意があるわけでございます。そして、委員長、委員についての任命がおよそどんな努力を払ってもできないということはこの改正国家公務員法は想定していないのだろうということを申し上げているわけでございます。
○馬淵委員 だから、政府見解として、国会同意がなされないことを外的障害だということでお認めになるかどうか。確認ですよ。確認してください。
○宮崎政府特別補佐人 繰り返しになりますけれども、この場合における国会同意は、内閣総理大臣の委員長、委員に対する任命権の限定でございます。したがいまして、19年改正法が、政府としていかなる努力を払っても任命権が行使できない、任命ができないということはこの法律は想定していないということを申し上げようと思って、そのように申し上げたわけでございます。(発言する者あり)
○衛藤委員長 内閣法制局長官宮崎礼壹君、再度答弁をお願いします。
○宮崎政府特別補佐人 この委員会につきまして、この法律が、委員会はというふうに独自に書いてあるのではまた話が別かもしれません。私ども、いろいろ検討いたしました。
 しかし、この退職管理に関するもろもろの権限というのは、内閣総理大臣がその事務を行うということで、18条の2以下、この19年改正でいろいろなものが導入されたわけでございます。政令なり、それから退職管理基本方針といったものの策定は、委員会には委任されておりません。内閣総理大臣の退職管理に関するもろもろの事務のうち、調査権と承認権というものについて委員会に委任するということになったのでありますから、そもそもこの法律、19年改正法の趣旨は、内閣総理大臣に退職管理に関する基本的な権限を行使させるというのが趣旨であるというふうに思います。
 したがいまして、委員会がどうしても成立しない場合において、この法律の趣旨に即すれば、内閣総理大臣がやむを得ず最小限度の範囲内において権限を行使するということは、法律の趣旨に反しないものだと思っております。(発言する者あり)
○衛藤委員長 馬淵澄夫君。
 馬淵君、発言してください。(馬淵委員「政府見解を出してください」と呼ぶ)
 再度、内閣法制局長官、答弁をお願いいたします。宮崎礼壹君。
○宮崎政府特別補佐人 若干繰り返しにはなりますけれども、仮に、内閣が任命権を行使するに当たりまして、国会同意を得るべく努力を十分にしないというようなことをして、その上で、勝手に、委員会でなくて自分で直接的に行使をするというようなことであれば、これは法律によって許されないと考えております。しかしながら、そういう努力を尽くしても委員の任命ができないということをそのような表現で申し上げたわけでありますが、その表現自体が適切でないのかもしれません。
 そこは、趣旨としましては、内閣なり政府が、委員の任命についての同意という、その要件を満足するために十分な努力、完全な努力を払ったかどうかということでありまして……(馬淵委員「撤回するのかしないのか」と呼ぶ)その場合、そういう努力を十分していない場合との比較において外的障害という言葉を使わせていただきました。その表現……(発言する者あり)
○衛藤委員長 静粛にお願いします。
○宮崎政府特別補佐人 そういう趣旨を表現しようと思ったにとどまりますので、その表現が適切でないということであれば、その表現は撤回させていただきます。

馬淵議員は、同意しないのが国会の意思、すなわち国民の意思であり、民主党が悪いのではないというようなことを述べている。しかし、それを言うのであれば、この国会同意人事の仕組みは法律で規定されているのであり、それも国会の意思、すなわち国民の意思ということになる。
一部の民主党議員は、はじめからこの同意をするつもりはなかったというようなことを発言している者もいた。本音がその辺にあるのであれば、どのように正論を言おうとしても、説得力を感じないのは当然なのではないだろうか。