いわゆる「渡り政令」について〜その後(下)

「渡り」については、世論の批判等もあってか、自民党政権下においても、その取扱いが変化することになる。そこで、今回は、その変化と「渡り政令」の現状について触れて、まとめとする。
まず、平成21年3月6日参議院予算委員会で、自民党の佐藤議員の質疑に対する答弁が政府のまとまった見解だと思われるので、それを取り上げておく。

<第171回国会参議院予算委員会(平成21年3月6日)>
○佐藤昭郎君 次に、公務員の再就職問題に関して御質問したいと思うんですけれども。官房長官来ていただいている、そして内閣法制局長官も来ていただいている。
 衆議院の予算審議の過程等で、この大改革に伴う経過措置というのは法律できちんとうたっていたんですよ、その政令を作ったところが法律違反だという批判を受ける。これは違うんだということをきっちりおっしゃっていただきたい。
 これ、経過措置がこの19年の国家公務員法の附則の16条にありまして、この法律の施行に関し必要な経過措置は政令で定めると、こうなっているんですね。だから、再就職監視委員会ができないときはこれを使って総理が、政令を作って総理にまた戻すというのは当然のことでありますし、内閣法制局長官も、これ再就職監視委員会が設置されないのが異例なんですよね。
 法律に、規定にある政令を規定、策定すること自体は異例でないということをしっかり御答弁いただきたいと思いますが、官房長官、法制局長官。
国務大臣河村建夫君) お答えいたします。
 今、佐藤委員御指摘のように、この退職管理法令は法律にのっとってやったことでございます。退職管理政令において各省があっせんの基準とかあるいは再就職等監視委員会が機能するまでの間、総理の権限行使に係る経過措置を定めているわけでありまして、これらの政令の規定がいずれも改正国家公務員法の規定にのっとって法律の範囲内で適正に定められておると、憲法や法律に一切違反していないということであります。
 これをもうちょっと補足いたしますと、いわゆる公務員は、国家公務員が退職される、特に退職勧奨、あっせんとかそういうことで退職される、それを再就職をしなきゃいかぬ。この場合はまだ各省のあっせんも認めております。その後、いわゆる官民交流人材センターに最後は移っていくわけでありますが、その際に、その就職先の基準、ちゃんと適正なものかどうか、この判断をしなきゃいかぬ、その承認する権限は総理大臣にあるわけであります、総理大臣に。しかし、これは内閣総理大臣の承認を得てと改正法はなっておりますから、そしてその権限は再就職監視委員会に委任することになっている、法律上そうなっている。
 ところが、この再就職監視委員会が委員長以下のメンバーの国会同意が得られません。これは想定外でありますが、この再就職監視委員会の委員長以下のメンバーについては、この法律の仕組みそのものが反対であるという野党の理由でこれが得られていない。すなわち受皿がございませんから、まだ権限が委任されておりません。
 そうすると、総理大臣の下に権限がある。当分の間は、委員長等が決まるまでの間、手元にある権限を行使することを、これはもう法律の誠実な執行をしろと、これは憲法の要請でもございますから、これは政令でやりなさいと、こうなっておりますから、これによって、改正法によってやったわけでありますから、明らかに法律違反、憲法違反ではないと、こういうことであります。
○政府特別補佐人(宮崎礼壹君) お答えいたします。
 本来、内閣総理大臣の権限でありますものを再就職監視委員会に委任するという国家公務員法第18条の4等の規定、これは同委員会が権限を行使できる状態にあることを前提としたものでありますところ、改正法の施行時点では同法第106条の8第1項に規定する両議院の同意を得ることができず、同委員会の委員長等を任命することができないため当該前提が成り立たない状況にございました。
 お尋ねの政令は、このような状況下では同法第18条の4等の規定は適用することができないということを前提に適正な退職管理を確保するため、委員会が権限を行使し得ることになるまでの間のやむを得ない措置として、国家公務員法等の一部を改正する法律第16条の規定に基づき法律の施行に必要な経過措置を定めたものでありまして、法律に違反するものではないと考えております。

しかし、政府における「渡り」の現実的な運用等については、変化していくことになるわけだが、その辺りの取扱いについて、平成21年2月17日衆議院予算委員会において、麻生内閣総理大臣が、自民党の石原議員の質疑に対し、次のように答弁している。

今石原議員からの御質問がありましたように、各省庁によりますわたり並びに天下りは、法律によりまして3年の経過期間中は認められているのは御存じのとおりです。しかし、今御指摘がありましたように、田野瀬議員の御質問に対して、私は、与党とのこれまでの議論というものを踏まえて、次のようにさせていただきますと申し上げたと存じます。
わたりにつきましては申請が出てきても認めない、これはすなわち運用の話になりますけれども、私がおります間は認めない、これが一つです。これに加えて、各省庁の天下りのあっせんというのは、これは3年ということになっておりますけれども、3年と言わずに前倒しで実施をいたしますと。これを明確にするために、わたり並びに天下りというものを今年いっぱい、平成21年いっぱい、度じゃありません、平成21年いっぱいで廃止するための政令をつくるように既に指示をしております。
政令の制定時期につきましては、意見公募手続、いわゆるあれをやらせていただきますので、意見公募手続などの関係もございますので、それの実施を経まして、年度内をめどに制定したい。すなわち、平成21年3月いっぱいということを目途にやらせていただこうと思っております。

上記の麻生総理大臣の答弁は報道等で承知していたけれども、そこで述べられている政令がどのようなものか確認していなかったのだが、それは、平成21年4月3日に公布された「国家公務員法等の一部を改正する法律附則第4条第1項の政令で定める日等を定める政令」である。
この政令の本則は次のとおりであり、その附則第2項で、「職員の退職管理に関する政令」について所要の改正がなされている。

国家公務員法等の一部を改正する法律附則第4条第1項の政令で定める日等を定める政令(平成21年政令第116号) 
国家公務員法等の一部を改正する法律附則第4条第1項(同法附則第10条及び第11条において準用する場合を含む。)の政令で定める日は、平成21年12月31日とする。

とりあえずこの程度で一応まとめとしておく。今後、興味を引かれるようなことがあった場合には、また取り上げてみたい。