文書管理規則は各執行機関が定めなければならないか

今回も、宇賀克也教授が「公文書管理法の制定を受けた地方公共団体の対応」『ジュリスト(No.1393)』で記載されていることを取り上げる。
文書管理に関する事項は、2007年11月2日付け記事「例規の形式(7)〜規則の内容(その6)」及び2007年6月30日付け記事「規則の活用〜文書管理に関する規程を規則にすることについて」で、長が全執行機関に共通する事項として規則で定めることが考えられる旨記載したところである。
ところで、上記論文(P32)では、次のように記載されている。

各執行機関の定める文書管理規則の制定・変更に当たり、長に協議し、その同意を得る仕組みは、条例で定めることにも問題があるように思われる。なぜならば、地方自治法は、普通地方公共団体の委員会または委員は、法律の定めるところにより、法令または普通地方公共団体の条例もしくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができるとしており(138条の4第2項)、委員会または委員に規則制定権を専属させているように解されるからである。

この記載によると、文書管理規則は、各執行機関が定めるものだという前提に立っているようにも考えられる。
しかし、上記論文は、各執行機関が既に文書管理規則を定めていることを前提にした記載であり、各執行機関に共通の文書管理規則を長が定めることができるかどうかについては、何も語っていないと考えることもできるので、必ずしもそのように解する必要はないと思う。上記論文で引用されている地方自治法第138条の4第2項も「普通地方公共団体の……の規則に違反しない限りにおいて」規則その他の規程を定めることができるとされているからである。
このような長の規則で全執行機関に共通する事項を定めることについて、鈴木庸夫『自治体法務改革の理論(P64)』(出石稔教授執筆)では、次のように記載されている。

委員会規則のあり方を考察するには、このような状況を踏まえ、行政委員会に専属する権限を生かし、かつ独自の施策を展開していくために積極的に委員会規則を活用すべきか、条例や執行機関を統括する長の総合調整機能のもと定められる規則を行政委員会の活動の主たる根拠とし、委員会規則はこれらを補完する機能にとどめるかという論点があるだろう。例えば、情報公開条例や個人情報保護条例など全執行機関を対象とする条例の施行にあたり、長および各行政委員会がそれぞれ規則制定して対応するか、長が全執行機関を包含する規則を制定して対応するかという点に具体にみることができる。

これは、長の規則で全執行機関に共通する事項を定めることについては肯定的に捉えているものと思われるが、文書管理に関する事項についても同様に考えてよいのではないだろうか。