非常勤の行政委員の報酬が月額制であることについて〜大阪高裁判決から(下)

私は、大阪高裁判決の原判決である大津地裁判決について、2009年5月29日付け記事で、次の3点について疑問があると記載した。
1 立法趣旨を強調し過ぎている点
2 常勤・非常勤の区別が曖昧であること
3 自治体の行政委員の報酬は、それ程高額ではないこと
このうち、1については、私の大津地裁判決に対する感想とは視点が異なっているのだが、立法過程をたどることによって、地方自治法第203条の2第2項ただし書の条例を制定するに当たっての自治体議会の裁量を広く認めている。
2については、判断をしていない。非常勤としている委員はあくまでも非常勤であるという、それ以上のことは考えていない。
そして、それを踏まえて、3については、国における非常勤の委員に対する1日当たりの報酬額の限度額と比較することによって、高額であるとしている。
この判断だけを見ると、あまり批判のしようがないのが正直なところである。
しかし、上記記事で触れた国家公安委員会の委員のように、国の場合は、常勤として考えてよいか疑問がある者について常勤とされているので、このような者が勤務1日当たりに換算した場合の報酬額がどれくらいになるかということを含めて検討しない限り、一概に自治体の行政委員の報酬が高額とはいえないように感じる。
ところで、7月15日・16日の全国知事会議において、非常勤の行政委員の報酬を日額制にすべきとしたという報道がなされたが、今後はおそらくそのような方向に進んでいくのだろう。
ただし、その会議の資料である「都道府県の行政改革 中間報告」の「行政委員会の報酬見直し」において、改革の方向性として次のように記載されている。

行政委員の報酬については、地方自治法第203条の2第2項「その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし、条例で特別の定めをした場合は、この限りでない。」の趣旨を十分に踏まえ、検討を進めるべきである。 
ただし、全国調査の結果、現段階では見直しを実施した都道府県はまだ少数で、地方自治法の規定についての捉え方も各県により様々であること、また、司法判断を踏まえて見直す予定としている団体があること等から、全国一律の基準をもって見直すことは困難である。 
今後、既に見直しを実施した団体の見直し結果の内容、手法などを参考に、司法判断の状況等を踏まえつつ、各団体の実情に合わせ、各都道府県が自主的に見直しを進めていくこととする。

そして、その見直しの考え方の例として、次のような例を挙げている。

(事例1) 
地方自治法の趣旨から、月額支給とすることができる特別な事情がある場合を除き、原則日額支給とする。 
なお、月額支給とする特別な事情がある行政委員は、次のとおりとする。 
(1) 識見を有する者のうちから専任された非常勤の監査委員   
現行の勤務形態として日数が多く、自己活動への制約が非常に大きいこと
(2) 公安委員会委員   
現行の勤務形態として勤務日数が多く、職務内容等に照らし、職責が非常に重いこと
(事例2) 
すべての行政委員会について、会議や出張等の活動に対する日額報酬を基本としつつ、日額報酬では評価し難い職務や職責について引き続き報酬の対象としていく必要があると判断し基礎報酬(月額)を支給する。 
※ 日額報酬で評価し難い職務や職責の例    
会議の事前準備や調査研究、自己研鑽、日常的な相談・調整への対応など日数の算出が困難な活動や、執行機関の委員としての継続した職責等

しかし、上記の事例は、少なくとも大阪高裁判決等の考え方とは異なっているので、参考にできるかは疑問である。