「政策条例のつくりかた」

松下啓一先生から、御著書『政策条例のつくりかた』をいただきました。ありがとうございました。
この御著書には、政策条例の立案の過程が、原課の立場から具体的に記載されており、実践的な内容となっています。松下先生は、その立案過程のなかでも調査・調整、仕組みづくりが大切であると述べられていますが、その部分に限らず、その過程のすべてについて触れられており、しかも分かりやすいので、原課で条例の立案に携わなければならないけれども、その経験がない人には、そのアウトラインを知ることができます。
私自身も、条例の立案については審査という立場でしか経験したことがないので、十分に知っているのはその一面にしか過ぎないわけで(それなりに語れるのは、先生の御著書だと「条例案の作成と提案」の部分に過ぎず、分量的には10分の1程度でしょうか)、そういった意味でも大変興味深く読まさせていただきました。
なかでも調査の部分は、条例の立案において、立法事実は重要であるとよくいわれても、その立法事実をどのように確認するかという具体的な手法については、あまり記載されているものを見たことがないのですが、その手法としての調査について具体的に記載されており、大いに参考になります。
以下、その内容とはあまり関係ないのですが、御著書を拝見していて、条例の立案の過程において、御著書に登場しないような人物が登場したことにより、ややこしいことになったことを思い出しました。
あまり具体的には書けないのですが、原課の担当者は、条例の立案の背景を当然それなりに承知しているわけですが、それを承知していない人が原課の側に参加して、やたら条文を書こうとすることで、面倒なことになった経験があります。それは、原課の担当者が条文を書くのが不得手であることのほか、その条文をチェックする例規審査部門が、原課の思いを条文にしてくれず、あまり原課に信用してもらえないことからそのような人物の登場を許すのだと思います。
そういった意味で、原課と例規審査担当課の役割について、以前多少触れたこともあったのですが(2007年11月30日付け記事「自治体の例規審査に関する一考(上)」及び2007年12月1日付け記事「自治体の例規審査に関する一考(下)」)、自分としてはなかなかかくあるべしという考えがまとまっていません。ただし、この御著書では、これらの役割と関係についてもまとめられており(P24〜)、一つの基準となる考え方だという印象を受けました。