「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(中)

前回(「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(上))、同位の例規の規定事項を引用するような場合には、「○○に定める……」とするのが原則ということになると記載した。
しかし、例えば法律が法律を引用する場合であっても、次のような例は、法律という形式で定めるという意図であることが明らかであり、「で」とすることになる。

行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)
(審査会への諮問)
第42条 開示決定等、訂正決定等又は利用停止決定等について行政不服審査法(昭和37年法律第160号)による不服申立てがあったときは、当該不服申立てに対する裁決又は決定をすべき行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、情報公開・個人情報保護審査会(不服申立てに対する裁決又は決定をすべき行政機関の長が会計検査院長である場合にあっては、別に法律で定める審査会)に諮問しなければならない。
(1)〜(4) (略)

さらに、法律という形式で定めるという意図であるとはいえない場合においても、法律の記載例は統一されておらず、次のように「に」とする場合も、「で」とする場合もある。

地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)
(補償の実施)
第24条 基金は、この章に規定する補償の事由が生じた場合に、この法律に定めるところにより、補償を受けるべき職員若しくは遺族又は葬祭を行う者に対し、補償を行う。
2 (略)
地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)
(組合の給付)
第42条 組合は、この法律で定めるところにより、組合員の病気、負傷、出産、死亡、休業若しくは災害又は被扶養者の病気、負傷、出産、死亡若しくは災害に関し、第53条第1項に規定する短期給付を行うほか、第54条に規定する短期給付を行うことができるものとし、また、組合員の退職、障害又は死亡に関し、長期給付を行うものとする。

私は、同位の例規の場合は、既に書かれている法律の規定なりを受けて書くということを意味することが多いだろうから、原則として「に」とすればよいと感じている。
ところで、比較的新しい法律でも、次のように「の」とする例もある。

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)
(開示請求権)
第3条 何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長(前条第1項第4号及び第5号の政令で定める機関にあっては、その機関ごとに政令で定める者をいう。以下同じ。)に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる。

これは、本来であれば「に」とすべきところを、「に」とすると語感があまりよくないので、「の」にしているのではないだろうか。