「○○で定める」「○○に定める」「○○の定める」(下)

今回は、「○○」が法令以外の場合の規定例や同一の法令でも書きぶりに整合が取れていない規定例を取り上げる。

1 法令以外の法形式等に委任する場合
予算などの法令以外の法形式等に委任する場合の書き方としては、下位の例規に委任する場合と同様、次のように「で」とすることになる。

雇用保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令(平成21年政令第296号)
(平成19年改正法附則第40条第1項の規定により労働者災害補償保険の管掌者たる政府が負担する交付金等)
第47条 労働者災害補償保険の管掌者たる政府は、毎年度、予算で定めるところにより、平成19年改正法附則第40条第1項の規定により交付すべき額を協会に交付するものとする。
2〜4 (略)

2 行政機関に委任する場合
委任先が国務大臣のような行政機関の場合は、「で」というわけにはいかない。
この場合には、次のように「が」とする例と「の」とする例がある。

行政書士法(昭和26年法律第4号)
行政書士試験)
第3条 行政書士試験は、総務大臣が定めるところにより、行政書士の業務に関し必要な知識及び能力について、毎年1回以上行う。
2 (略)
行政書士会の役員) 第16条の4 (略)
2 (略)
3 副会長は、会長の定めるところにより、会長を補佐し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。

3 書きぶりに整合が取れていない例〜国家公務員法の場合
国家公務員法では、次のように、同じ人事院規則に委任するのに、「に」としている規定と「で」としている規定がある。

国家公務員法(昭和22年法律第120号)
(欠格による失職)
第76条 職員が第38条各号の一に該当するに至つたときは、人事院規則に定める場合を除いては、当然失職する。
(本人の意に反する休職の場合)
第79条 職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる。
(1)・(2) (略)

人事院規則は、法律より下位の例規であるから、第76条も「で」とすべきではないだろうか。
4 書きぶりに整合が取れていない例〜住民基本台帳法の場合
住民基本台帳法第30条の44は、次のように政令に委任する場合には「で」とし、条例の場合には「の」としている。

住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)
住民基本台帳カードの交付)
第30条の44  (略)
2 住民基本台帳カードの交付を受けようとする者は、政令で定めるところにより、その交付を受けようとする旨その他総務省令で定める事項を記載した交付申請書を、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の市町村長に提出しなければならない。
3 市町村長は、前項の交付申請書の提出があつた場合には、その者に対し、政令で定めるところにより、住民基本台帳カードを交付しなければならない。
4〜7  (略)
8 市町村長その他の市町村の執行機関は、住民基本台帳カードを、条例の定めるところにより、条例に規定する目的のために利用することができる。

これは、例規の形式の違いからあえて書き分けているのかもしれないが、条例であっても「で」としてよいのではないかと思う。