「設置する」と「置く」(上)

少し前になりますが、kei-zuさん(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20100821)が「設置する」と「置く」について取り上げておられましたが、私も特に組織に関してこれらの用語が用いられている例を取り上げてみることにします。
法令用語研究会『法律用語辞典(第2版)』(P829)には、「設置」という用語について、次のように記載されている。

物や機関などを新たに設けること。「公の営造物の設置又は管理」……のように、単に物理的に設けることを意味する場合と、「地方公共団体には、…議会を設置する」……のように、法律上の存在として設けるとの意味を含ませる場合がある。後者の場合は、「設ける」又は「置く」ということも多い。

この記載からすると、組織については、法律上の存在として設ける場合が多いので、「置く」とされる場合が多いということになる。次の例のように「設置する」を「置く」に改めた例すらある。

中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第102号) 
ユネスコ活動に関する法律の一部改正)
第72条 ユネスコ活動に関する法律(昭和27年法律第207号)の一部を次のように改正する。
第5条第1項中「わが国」を「我が国」に、「として」を「として、文部科学省に」に、「設置する」を「置く」に改め、同条第2項を削る。
(参考) 改正後のユネスコ活動に関する法律
(設置)
第5条 ユネスコ憲章第7条の規定の趣旨に従い、我が国におけるユネスコ活動に関する助言、企画、連絡及び調査のための機関として、文部科学省に、日本ユネスコ国内委員会(以下「国内委員会」という。)を置く

これに対し、施設的な意味合いが強い組織については、物理的に設けるという趣旨が強いので、「設置する」とされる場合が多いということになる。例えば、次のように「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」では、刑事施設視察委員会については、「置く」が用いられているのに対し、留置施設や海上保安留置施設については、「設置する」が用いられている。

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律第50号)
(刑事施設視察委員会)
第7条 刑事施設に、刑事施設視察委員会(以下この章において「委員会」という。)を置く
2 (略)
(留置施設)
第14条 都道府県警察に、留置施設を設置する
2 (略)
海上保安留置施設)
第25条 管区海上保安本部、管区海上保安本部の事務所又は海上保安庁の船舶に、海上保安留置施設を設置する
2 (略)

さらに、次のように消費安全法では、消費生活センターについて、「設置する」が用いられている。

消費者安全法(平成21年法律第50号)
消費生活センターの設置)
第10条 都道府県は、第8条第1項各号に掲げる事務を行うため、次に掲げる要件に該当する施設又は機関を設置しなければならない。
(1)〜(3) (略)
2・3 (略)

しかし、消費者安全法第23条は、次のように「置く」を用いており、統一されていない。

(権限の委任)
第23条 (略)
2 前項の規定により消費者庁長官に委任された前条第1項の規定による権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事又は消費生活センター置く市町村の長が行うこととすることができる。