定住自立圏構想(中)

定住自立圏構想のスキームに関して気になる点について、2点触れることにする。
1 定住自立圏の圏域について
定住自立圏構想推進要綱(以下「要綱」という。)によると、定住自立圏は、中心市と周辺市町村が、1対1の協定を締結することを積み重ねる結果として、形成される圏域であるとされている。つまり、中心市であるA市がB町及びC村とそれぞれ協定を締結した場合には、A市、B町及びC村の区域が一つの定住自立圏になる。
しかし、このスキームは、3市町村の区域が次のようになっている場合を想定すると、ややおかしいものになってくる。

A市B町C村
C村とA市とが定住自立圏を形成しようとする場合には、当然B町も含まれていなければ圏域とはなり得ない。そうすると、1対1の協定ではなく、3市町村共同の協定とした方が実体に合うことになる。実際、このような場合には、あらかじめ3市町村で協議の上、協定を締結するのが通常であろう。
結局のところ、定住自立圏を形成する市町村共同の協定ではなく、1対1の協定としたことによって、確かに手続は簡便にはなったであろうが、実体とは合わないものとなってしまったことになる。総務省は、法令ではなく、要綱に基づく制度とした理由として、弾力的な運用ができるからとしているが、このような制度では、そもそも法令に基づく制度とはなし得ないのではないだろうか。
2 定住自立圏形成協定の締結の際に議会の議決を得ることについて
要綱によると、定住自立圏形成協定は、それぞれの市町村において、その締結又は変更に当たって、地方自治法第96条第2項に基づく議会の議決を経たものをいうとしている。
そもそも、国の要綱で自治体の議会の議決を求めているのが奇異な感じがする。さらに、同項に基づく議会の議決は、いわば当該自治体の意思として、議会の議決が必要と考えて、条例で規定するものであることからすると、おかしいことになる。
定住自立圏形成に係る手続は、国等の他の団体が関与することはないので、議会の議決がなくても執行機関限りで同様のことはできるのである。