定住自立圏構想(下)

定住自立圏の数が49圏域であることが多いのか少ないのかはよく分からないが、定住自立圏構想に対する理解は、まだ十分なものとはいえないだろう。例えば、以前、ある地方紙の社説で、定住自立圏構想について、次のような記載があった。

少しずつでも自立圏の取り組みが広がるよう期待したい。 
国や都道府県には、財源や権限を思い切って自立圏に移していく姿勢が要る。例えば、都市計画の決定権がある。鳥獣被害対策のような事業には、まとまった財源を移してもいい。

定住自立圏構想においては、中心市と周辺市町村が役割分担をし、それに基づき各市町村がそれぞれ事業を行っていくことになる。したがって、自立圏そのものに財源や権限を移譲することは考えられない。
定住自立圏に取り組もうとする自治体側の意識も、その内容よりもその取組に対して講じられる特別交付税措置などの財政措置があるから行っている面が強いのではないだろうか。そのため、前回(「定住自立圏構想(中)」)も記載したように、定住自立圏構想で想定している取組自体は、定住自立圏構想というスキームで行わなくてもできるのに、あえて議会の議決を経て取り組んでいるのである。そして、そのような財政措置を受けられることを説明しなければ、議会の了解を得られないという話も聞くところである。たとえ、特別な財政措置がなくても、各市町村が連携することで経費の節減を図ることによって財政的なメリットが得られる取組はあるにもかかわらず。
これまで総務省(旧自治省)が推進してきた広域連合を始めとする広域行政は、あまり成功しているとは思えない。それは、目先の利益(財政措置)がなければ自治体は取り組もうとしないということを表しているように思う。
定住自立圏構想に対する財政措置の主なものである特別交付税措置は、中心市が4,000万円、周辺市町村が1,000万円を標準として、その額を限度にその取組に要した費用に対するものである。しかし、それが特別交付税であるだけに、見た目程有利な措置とはいえないように思う。そうすると、定住自立圏の取組による実際上の財政におけるメリットが分かった後に、定住自立圏に対してどのように取り組んでいくかによって、自治体の広域行政に対する意識を測ることもできるのではないかと思う。